鎌倉幕府の終焉へと向かう激動の時代を、対照的な二つの視点から鮮やかに描き出した歴史群像劇です。
本作の特筆すべき点は、後醍醐天皇の討幕への決意を、政治的野心以上に「最愛の正妃を守れなかった悲しみ」という極めて個人的な情愛から説き起こしている点にあります。
最高権力者の孤独な憤りと、その裏にある溺愛の物語が、歴史の大きな歯車を回し始める展開には強く引き込まれます。
一方の鎌倉側では、長崎高重や北条益時といった次世代を担う若者たちの、純粋な友情と理想が描かれます。
幕府の歪みに悩みながらも「自分たちが平和を守る」と誓い合う彼らの輝きが、歴史の結末を知る読者の胸に切なく響くのではないでしょうか。