第1話「安全な他人」の文章のリズムが最高だ。裏社会の見張り仕事をこなす主人公・総司が、暗いスナックの前に3時間立ち続けながら通行人の数を数え、電線の揺れる回数を数える——この無心の時間潰しの描写だけで、彼がどんな世界で生きているかが一瞬で伝わってくる。母親からの電話を「今は仕事中だから」と短く切り、帰らない妹・未希への心配を「夢見が悪くなるに決まってる」と振り払って眠りにつく。セリフは極端に少なく、一文一文が短い。それなのに、あるいはそれだからこそ、冒頭に置かれた「……おにいちゃんは……私より長生きしてくれる?」という幻聴一行の重さが、読み終えてもずっと残り続ける。ノワールとSFが交差する世界観に骨太な予感があり、第2話へと引き込まれた。