雪は外を白く染め、湯気は内側を満たしていく。
冬の朝のワンシーンを、まなざしで描いた短編。
概要に記されていた言葉。
淡々と記された冬の朝の日常は、静かで穏やかでとても落ち着いています。
丁寧な描写は「まなざし」という言葉通り写実的で簡素、垣間見えるその心の息遣いがとても好ましく思えました。
雪に覆われた早朝、皆様も覚えがあるかと思いますが、外部音の反響が雪により吸収され、室内がとても静かに思えます。閑静な早朝は驚く程ではないですが、普段と少しだけ違う空気を持ちます。それは冷気の冷たさと相まって、人の営みの温かさが感じやすくなるのです。
ここで語られる言葉は装飾を排し、特別な言い回しや詩的表現なども敢えて抑え、むしろ誠実に実直に日常を捉えられております。
こういう境地が、僕にはとても大切に思えます。
時に人生を襲う苦悩や孤独、耐えがたく狂おしい感情、そのようなものに対して、冷静さという人が持ち得る「生きる工夫」を教えてくれている気がするのです。
人生とは日常の積み重ねですが、その積み重ねの「ずれ」がいつの日か全てを台無しにしてしまう時だってあります。
僕は淡々と描かれたこちらの作品が纏う空気を吸うと、落ち着いて冷静に時間を積み重ねていきたくなります。
人生とは凡事徹底、傲慢さや絶望などの対極、この作品が持つ「生きている日常の風景」は、心に大切にとどめておきたいものなのです。
お勧め致します。
皆様もこの静かな作品の持つ、「かけがえのない普通」を味わって見られては如何でしょうか。
多くの皆様へ、宜しくお願い致します( ;∀;)