前半部分は人生氷河期を生き抜いた女性の孤独と諦念が、コンビニ弁当の冷たさや昭和喫茶の温もりとして丁寧に描かれ、社会小説のような重みを持つ。そこから一転、後半部に突入すると、温め屋によって、記憶・時間・人生の可能性が溶かされていく展開が鮮やかだ。温め屋は幻想装置としての役割を果たしているように感じた。一言でいうなら、良き!救済は決して社会には与えられないが、個人の内面には確かに起こりうるのだと静かに示されたように感じる。素敵なファンタジーの世界に没入できた。感謝したいくらいに。