自分の正義を貫くことはかっこいい。
でもそれではきっと、英雄にはなれないだろう。
これは沢山の英雄たちの冒険譚に埋もれてしまうような、英雄になれなかった男の物語である。
トルムは冒険者であった。
同じく冒険者であった父のようになりたいという確たる思いを、彼は胸に抱いていた。
単独の冒険者であったトルムは、あるパーティーに参加することになる。
今回のクエストは商人の護衛であったが、そこにはパーティーではない二人の女性がいた。
彼女たちは男性メンバーの性欲のはけ口として同行している娼婦だ。
多くの冒険譚では触れられない、「性の処理のため」に同行する娼婦という存在が描かれる珍しい作品。
彼女たちの命は、風にさらされる小さな炎のように、頼りなく儚い。
その炎が今まさに消されようとするとき、父のようで在りたいと思う正義と、冒険者としては当然の合理の間で、トルムの心は揺れ動く。
本作は概要に「バッドエンド」だと記載されている。
しかし、バッドエンドにすることでしか描けないものがある。
この作品はまさにそれだと感じた。
きっとハッピーエンドであれば、こんなにも心に残ることはなかっただろう。
ぜひ、ご一読を。
これが、トルムの生き様です。
亡き父に憧れて冒険者になったトルム。彼はまっすぐな冒険者になろうと思っていたはずが、現実は理想とはかけ離れていた。
そんなトルムが出会ったのは一人の娼婦・ティシーだった。性欲にまみれた冒険者パーティーに辟易した彼が選ぶ道とは――。
どんな相手にも対等に接しようとするトルムの姿に胸を打たれました。退廃した世界に一石を投じた彼は、ヒーローにはなれなくとも真の意味での“勇者”なのかもしれません。
全体的に惨たらしいというか切ないというか、なんとも救われないお話です。それゆえか普段は考えないような「愛」や「尊厳」といった哲学的な事柄について色々と考えさせられました。
結局のところトルムはどうすれば良かったのか――。読者はどこまでも答えのない難題に沈みこんでゆきます。
よくある勇者ものとは一線を画す、捻りの利いた題材を読んでみたいという方は是非お楽しみいただけたらと思います。
Mr.ChildrenのHEROという歌が脳内に流れました。
どこまでも虚しく、救いのなく、それでいて暖かいお話にございました。
悲しい異世界ですが、倫理観は中世あたりのそれと似通っていたのか、
戦場に娼婦を連れているそうです。
普段は一匹狼でやっている主人公が、ある以来のためにパーティーに参加したのですが、
そのパーティーにも娼婦がおりました。
主人公は厳格な性格なのですが、
一晩、娼婦と肩を寄せ合い眠りについたのが……悲劇の始まりだったのやもしれません……。
HERO。
その言葉の定義は実は難しく、何を以てしてヒーローと呼ぶかは曖昧な部分があります。
その言葉の定義について、ある人はこう言いました。
それは敵を殺す人のことじゃありません。
お腹を空かせている人を見かけたら、その人のためにパンを差し出す人が本当のヒーローです。
ご一読を。
トルムは冒険者。
高潔な冒険者だった父に憧れて冒険者になったが、理想と現実は異なるもの。
そんな現実に辟易しているときに
美しい娼婦ティシーに出会う。彼女たちは冒険者を温めるために同行しているのだ――。
トルムが理想とは真逆な現実でも、誠実であろうとするのが切ない。
ファンタジーの世界観だが、リアルな感覚が漂い、切なさを増しています。
トルムは父のようになりたかったのでしょう。
ひとりで現実世界でもがいているようにも思えました。
ティシーの現実も厳しい。彼女たちはなにかあったら囮にされたり見捨てられる存在だから。
そんなふたりが、肩を寄せ合うシーンでは胸が締め付けられるようでした。
現実は厳しい。けれどもそんな現実世界で出会えたことは奇跡だったのかもしれません。
お互いの温もりを感じながら、彼らは確かに幸せだったのかもしれないと思えました。
オススメです。ぜひご一読下さい…!!
理想と現実の狭間。改めて掘り下げると、やっぱり切ないことだな、と思いました。
主人公トルムは冒険者に憧れていた。高潔な冒険者だった父のようになりたい。そんな幼い頃からの夢を叶えるため、冒険者として武器を手に旅に出ていた。
だが、現実は綺麗なものではなかった。
冒険者たちは下卑た人間が多く、旅には「娼婦」なんかを連れ歩くことになっている。
この設定の段階で、「これが、現実的なものかもしれない」と強く思わされました。
冒険者というと、ゲームの中の世界を地で行くような夢のある職業のように思える。けれど、実際には「危険な境遇の中で荒事をこなして生きている輩」も大半となっており、単にそれは社会のレールから外れているアウトローのような側面も強いのかもしれない。
そんな現実を前にしつつも、高潔でありたいと願うトルムは、娼婦として連れてこられたティシーと交流し、彼女の身の上話などを聞くことにもなる。
ファンタジーな世界の現実と、過酷な境遇。理想とは異なる現実。そんな中で懸命にもがくトルムの姿がとても心に響きます。
彼は「この物語の主人公」ではあるけれど、「この世界の主人公」ではなかった。
そんないわゆるモブでしかない彼の想いは、この世界の片隅でひっそりと誰にも知られずに終わってしまうものなのかもしれない。
そんな儚さや切なさを感じられる、ファンタジーの知られざる一幕を描いた作品。読む人の心にきっと、何かを残してくれるものとなるでしょう。