結婚の条件という言葉があります。
人にはそれぞれの抱える理想があったり事情があったりします。
それは収入や容姿、家庭環境、教育方針、ライフスタイルと様々です。
僕はそれって「恋愛」から一番遠い話だと思うんです。
愛し合って結婚するのに、結婚する条件は「恋愛」からもっとも遠いお話です。
結婚してからもそうです。
家事はどうする、買い物はどうする、ゴミ出しはどうする、クリーニングは?
結婚生活を維持するのは、やはり「恋愛」からもっとも遠い話です。
僕はかつて小説内で「俺は結婚って言うのが最悪の愛の形だと思っている。だってそうだろ、好きな人となんで税金の話やゴミの収集日の話をしないといけないんだ」と書いた事があります。
僕らは恋をして愛を育み、結婚します。
でも、結婚という形式の「一部」は(全部じゃないですよ)、そういう「かけがえのない愛を無駄に消費」しなければ成立しません。
つまり、「我慢」です。
さて、本作です。
望まない結婚を強いられたヒロインのお話になります。
それはもう「我慢」で始まり「絶望」で終わりそうな勢いです。
ですが、そうではありません。
いや、僕はそうではないと読み取りました。
お勧め致します。
ネタバレになるので詳しくは書けませんが、この物語は壮大な愛の物語。
僕らは結婚と言う形式で、ある種「消耗してゆく自分」を認識しますが、それだけではないものを見つけます。それは「とても温かい」ものだと思うんです。
皆様、宜しくお願い致します( ;∀;)
婚約者と引き離され、呪われていると噂のカルロス王子のもとへと嫁がされたアニエス。
夫となる王子は言葉も話せず、ただ涎を垂らしながら抱きつくだけの人だった。
当然愛情も感じられず、ただ心を殺して抱き人形となる日々を過ごす彼女。
周囲はそれでも子供はまだかと責め立てます。
次第に彼女は心を壊して……
彼女を追い詰めた原因である王子。
しかし、周囲がすべて彼女を見放した時、最後まで愛を捧げたのも彼。
夫として愛することは出来なくても、彼女の中で彼に対する愛の形が生まれます。
切なくてどうにもならないもどかしさはありますが、これも一つの愛の形なのではないでしょうか。
愛を温める。
悲しい愛ですが、透き通るように純粋です。
政略結婚を命じられ、異国に嫁ぐことが決まったアニエス。
けれど、王子は健常者ではなかった。
恋仲だった許嫁のアルフォンスは彼女に言います。
王子は呪われている。
君は汚されることもない。
だから、待っててくれ。
必ず、君を取り戻すから。
豪華な花嫁衣装に身を包み、王子と結婚式を挙げたアニエス。
初夜の床で彼女を待ち受けていたのは、耐えがたい拷問のような時間でした――
恋しいアルフォンスの無事を願い、ただひたすら王子との毎日を過ごすアニエス。
けれど、彼女を離さない王子の「子供のような体温」が、少しずつ、けれど確実に彼女を蝕んでいきます。
精神的な限界から、やがてアニエスに起こり始めた異変。
彼女のそばに最後まで残り続けたのは誰だったのか。
逃げ場のない運命の中で、愛と諦念が混ざり合う、静かで残酷な物語でした。
ある王国の公爵家の娘、アニエス。彼女には許嫁のアルフォンスという男性がいた。
二人は両思いだった。
しかし、ある日、アニエスは急に、海を越えたところにある国の王子――カルロスに嫁ぐように命令される。
嫌がるアニエスだが、拒否することはできず、嫁入りの準備を進める。
アルフォンスと会うことも禁じられるが、しかしある日、彼と会ってしまう。アルフォンスは言う。カルロス王子は呪われていると。また、きっとどれだけ時間がかかっても君を取り戻すと……。
呪われているとはなんなのか、アルフォンスは本当に取り戻しに来てくれるのか……それはあなたの目で是非確かめてみてください。
現代でも、なかなか思うように恋愛はできませんが、昔はもっとそうだったのだろうなと、そう感じさせる作品でした。
切ないですが、これはこれで一つの愛の形を表現した物語なのではないかと思います。おすすめです。
とても寓意的に、色々なテーマが含まれた作品だと感じました。
主人公のアニエスは「政治の道具」として異国に嫁入りさせられることが決定する。
アルフォンスという恋人がいたものの、他国の王子であるカルロスがアニエスを見初めたとかで無理矢理に海を渡らされることに。
その先で出会ったカルロスは「呪われている」と評判だった。
彼には一切の知性がなく、姿も醜い。精神年齢も当然幼いため、ぬいぐるみでも可愛がるかのようにアニエスを毎日抱きしめるようなことを続ける。
当然、ストレスが溜まって来る。アニエスは平静な精神状態を保つことが出来なくなり、それはやがて外見にも変化を表していくことになってしまう。
ここから先の展開が、「色々なテーマ」を人によって読むことができそうだと感じさせられました。
姫は美しい容姿を持ち、同時に「美しい恋人」や「美しい人生」というものに憧れを持っていた。
でも、自分自身の美しさを失うと共に、それら全てを手に入れる機会を失った。
そして目の前にあるのは、「美しさ」とは完全に無縁な存在のみ。それでも「妻」という事実だけで自分を大事に扱ってくれる。
これは「理想からの脱却」と「現実の許容」みたいなイメージとして読み解くことも出来そうだな、と感じました。
若い頃にはキラキラした恋愛とかに憧れるけれど、中年以降はそんなものよりも「ありのままの日々」を大事にしていく方が重要になっていく。
姫が最終的に辿り着いた「安堵感」のようなものは、そんな「理想とは違う現実」そのもの安心感みたいなものだったのかもしれない。
本作はそんな風に、「人生」というものの本質に通ずるものがあるのかもしれない。姫や王子の姿を見て、そんなテーマを感じ取れました。