千年の禁錮刑を課された狼男アドガードが、暗闇の監獄で目を覚ますと、そこに立っていたのは国家統一を目指す少女リリメル。
千年後ではなく、わずか八十年で呼び起こされたというズレが物語に強烈な勢いを与えていて、二人の出会いがまさに“物語の再起動”という感じで胸を掴む。
煩悩まみれの世界に殴り込み、罪人たちを引き連れて突き進む姿は痛快で、原典の西遊記を思わせる構図がありながらも、まったく別の熱量で駆け抜ける。
理不尽に囚われた獣と、最強の少女が手を組むことで生まれる破壊力と爽快感が魅力的で、世界をぶち壊しながら進む旅路がどこまでも刺激的。
“もう一つの西遊記”としての新しい冒険が楽しめる一作。
明るい少女の無謀な旅が、世界の歪みを少しずつ暴いていく物語です。
主人公リリメルは、一見すると可憐で朗らかな華聖の少女。
けれど彼女が最初に迎えに行くのは、八十年もの間、千年刑務所に閉じ込められていた伝説の獣人アドガード・ウィキです。
この出会いから物語は一気に動き出します。
獣人を随人として扱う制度、宗派同士の争い、戦争によって荒れた街、そしてその中で利用される弱い者たち。
明るい会話や軽妙なやり取りの裏に、この世界の残酷さがきちんと見えてくるところが印象的でした。
アドガードは恐ろしい伝説として語られている人物ですが、実際には言葉少なで、現実をよく見ていて、誰かを見捨てきれない男として描かれます。
彼が八十年ぶりの食事や外の空気に触れる場面には、静かな重みがありました。
また、新聞記者カナの視点が入ることで、リリメルたちの旅が「世の中にどう伝わるのか」という広がりも生まれています。
リリメルが集めようとしている仲間たちも一筋縄ではいかない人物ばかりで、彼女の目的が本当にどこへ向かっているのか気になります。
可愛らしい冒険譚のように始まりながら、差別、戦争、制度、技術の変化まで絡んでくる物語。
リリメルの笑顔の奥にあるものを、これから追いかけたくなります。