普通の少女として育てられた彼女は、やがて自身が『聖女』だと知る事になる。
ただ、それは彼女の受難の始まりでもあった。
特別な存在であるが為に、親族には妬まれ、冷遇を受ける。
それでも彼女は、己の不幸にも気づかない。
だって、今以上の幸福を、彼女はまだ知らないから。
己が望むモノさえまだ知らない彼女は、やはり『聖女』として生きていく。
己を蔑む者を恨まず、ただ親族の為にルミナス王国へ輿入れする事になる。
そこで待っていたのは、一人の少年。
孤独を秘めた、その少年を彼女は知る事になった。
そこで初めて、何かを欲する欲求に目覚めた彼女は、ただこう願う。
「自分がこの少年の心を、温められたなら」――と。
己の想いが、少年を癒せるならどれだけいいだろうと、考える事になる。
これは半年に及ぶ、戦いのプロローグ。
万人を愛するより、一人の少年だけを愛す事を選んだ『聖女』の物語。
やがてその『聖女』の愛は、確かにその少年に注がれる。