勇者と呼ばれ魔王と対決!魔王ってばさ、もしかして双子のお兄さん?〜いにしえ物語。古典✕ラノベ〜

袋田タキ

1話 いやいやっ!母さん置いて行けませんっ!の巻

■さてもさても物語はここより始まりて、二人の兄弟、知らずして死闘の道へと進みゆく…。


​♪ラノベ訳:

それではこのストーリーを始めましょう。二人の兄弟はお互いの存在を知る事なく決戦の日を迎えます。それではお楽しみ下さい。


■「母上、今宵も父上は帰り給はず。いつの世にか、三人(みたり)睦まじう暮らさんと思ふに、心細う侍り。」

戸を叩く音して、「カイン、入るぞ。夕(ゆふ)さりつ方の飯(いひ)なり。汝(なむぢ)も働かずは、我もいつまでか情けをかけん。」


​♪ラノベ訳:

「ねぇ母さん、今日も父さん帰って来なかったよ…。僕達はいつになったら三人で暮らせるのかな?」

トントントン

「カイン入るよ。夕食だよ。あんたも働いて貰わないと、こっちはいつまでもボランティアするつもりは無いよ。」


​■「ヴェルネの嫗(おうな)、許し給へ。母上の薬の代(しろ)は、月隠(つきごもり)には必ずや。今しばし待ち給へ。」

「汝が父より預かりし金(こがね)は、疾(と)うに尽きにけり。こなたも汝らをもてなす余地(よち)なし。」


​♪ラノベ訳:

「すみません。ヴェルネ夫人。母さんの薬代は月末にはお支払いしますから、もう少し待って下さい。」

「あんたの親父さんから預かってる金なんかもうとうに無くなってるのさ。こっちもあんたら養う金なんてないね。」


​■母上、物心つきしより、病重くして、詞(ことば)を発(はつ)することだになし。ただ臥(ふ)し給へるのみなり。父もまた、旅に出でて、音(おと)もせずなりぬ。父の御(おん)かたち、ただ夢にのみ見ゆ。いかなれば、かかる地獄の如き世を過すらん。


​♪ラノベ訳:

母さんは物心ついた頃から病気で口もきけない。ほとんど寝たきりだ…。父さんも旅に出たまま帰って来ない。面影しかないお父さん。いつになったらこんな地獄から抜けだせるのか……。


​■「頼まう、頼まう。ここにイガールの里の生まれなる者ありや。頼まう、頼まう。」

外、いたう騒がし。村を守る兵(つはもの)の聲(こえ)にはあらず。母上こそ、イガールの生まれと聞き侍れ。


​♪ラノベ訳:

「頼もう! 頼もう! ここにイガール地方の生まれの者はいるか? 頼もう! 頼もう!」

外が騒がしい。村を守ってくれる衛兵さんの声じゃない。母さんはイガール地方の生まれだけどな。


​■「失礼す。我は聖なる騎士、三番の隊長、フレイルといふ者なり。ヴェルネの嫗より聞きつ。汝はイガールの生まれか。」

「知らず。母こそイガールの出身(いでたち)なれど、己(おの)が生まれたる所は、え知らず侍り。」

「我ら、今は亡きイガールの民を求むるなり。急ぎのことなれば、王の都まで同行(どうぎやう)せよ。」


​♪ラノベ訳:

「夜半に失礼する、私は聖騎士三番隊の隊長のフレイルだ。ヴェルネさんところのご夫人から話は聞いた。君はイガール地方の生まれかな?」

「分かりません。確かに母はイガール地方の出身だと思いますが、僕が生まれたのはどこかは分かりません。」

「私達は、今は滅んでしまったイガール地方の人々を探している。至急で申し訳ないが、首都までご同行願おう。」


​■「母上まします。病める人を置きて去るべくもなし。薬の代もヴェルネの嫗に借りぬ。我、働きて母を養ひ、父の帰りを待つ身なり。」

「汝、イガールの生き残りならば、必ずや王の許(もと)へ参るべし。これは、王の仰せなり!」

♪ラノベ訳:

「母さんがいるんです。病気の母さんをおいて行けません…。薬代もヴェルネ夫人にお借りしているのです。僕は働いて母さんの看病と父さんの帰りを待たなくてはいけないのです。」

「君がイガール地方の生き残りだとすれば、必ず国王の元へ馳せ参じる事を命令する! これは国王の勅命である!」


つづく

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