6
「うわっ」
それは生温かかった。
「…………」
「いっくん、一回それお姉ちゃんに渡してもらえるかしら?」
「うん……。って、ちょっ! 恵実姉ちゃんがそこに入れないでッ!」
恵実はローブの上から自分の谷間に収納した。
「上書きしておくから」
「…………」
もう誠一は何も言えない。
「けっけっ、仲が良くてなりよりだな。んで、その単眼鏡は、〈真実を抉り出す眼鏡〉だ」
とパープルは言う。
「物騒な名前だ……」
と誠一は顔を引き攣らせる。
「そうだぜ、物騒だ。まあ、使いこなせたらの話だけどな。そいつはお前の『真実の瞳』と合わせると、霊体の核も視えるし、〈魔法〉や〈魔術〉、〈気術〉、〈法術〉、〈呪術〉の核も視えるようになる。んで、それを突けばお前は実体のない相手や、相手の攻撃も防御も切り裂くことが出来る」
「おぉ」と誠一は感嘆したが、すぐにあれ?と思った。
「使いこなせたらって……? もしかしなくても、それは自分で当てなきゃいけないってことですか?」
「おう、ご名答だ」
と言うことは、今まで以上のものが視えるようになるが、やはり視えるだけであり、当てることは誠一自身のマニュアルということだ。
「良かったんだろうか……」
「はっ、そりゃあ良かっただろうが。本来は実体のないものの核を〝真実〟として現出させて干渉出来るようになる。破格の能力だろうがよ。やろうと思えば、そこの姉ちゃんの核を視て、それを貫けばイッパツでヤれるぞ」
と、パープルは恵実を見ながら言う。
すると恵実は胸元にしまった〈真実を抉り出す眼鏡〉を取り出すと、誠一に渡すのである。
「ベッドの上でお願いするわ」
「こんなところで言うのは止めてね! それとそんな意味じゃないと思うよ!」
たぶん、相手という存在の〝核〟を現出させて貫けば、文字通り一撃必殺になるのだと思う。誠一専用のアイテムであるこの単眼鏡に触れると、なんとなく出来ることが分かった。
今まで、〝直死の一撃〟は、相手に元からある弱点を探し出して放つものだった。だが、この単眼鏡を使えば、元は表在化していなかった相手の〝存在〟の〝核〟を現出させられるようになる。つまりは相手の弱点を無理矢理〝真実〟として抉り出すのである。
故に〈真実を抉り出す眼鏡〉。
エゲツない能力ではあるが、それを視るためには誠一の〝意志力〟が足りていないと駄目であり、当てること自体も、これまで通り誠一の手動である。
――それなら、銃とかの方が当てられそうな気がする。……練習は必要だけど。
単眼鏡を着けた拳銃とナイフの二刀流スタイル。
どこの厨二病主人公だろうか。
『厨二病』オジサンの家族がスーパーバイザーとなり、オジサンも鼻息がハスハスしてしまうに違いない。
――ちょっと、考えよう。
誠一は、今度は恵実の体温で生温かくなった単眼鏡を受け取りながら思うのだ。
そして、全員へのご褒美の授与は終わって――はいないのである。
「んで、お前はこれな」
と、パープルはここでようやく隼人の方へと向き直った。
彼は今まで黙っていた。
黙って、零れ落ちそうになりながらも乳首が見えず、たぷたぷと揺れるたわわを視姦し続けていた。男は黙って、視姦!
「死ねば良いのに」
恵実の視線はもう冷え切っている。
『天翼の乙女』の総意でもある。
ちなみに『エインヘリヤル』の面々は、隼人のそういうところをもう無視することにしているらしい。そして、ハニートラップホイホイに使えるのならば意図的に操作し、彼のプライベートなことは放っておき、刺されれば「またかあの野郎」と思うくらいである。
パープルが隼人に投げて寄越したのは、筒状のブツだった。
もしかしなくても、
「〈魔法のオナホ〉だ」
「え?」
と隼人は目を見張った。
あ、恵実が誠一の耳を塞いでいる。
――いや、ぼくには視えるし、もう恵実姉ちゃんたちと色々とヤっているけれど……。
だからただのお約束で様式美である。
「悦べ、お前にピッタリの形状に変化して、それじゃないと満足出来なくなるような代物だ」
と、パープルはニカッと笑って親指を立てていた。
誠一もちょっと興味がなくもな……「いっくんは必要ないわよね?」
と、恵実に耳元で囁かれた。
鼓膜が凍るかと思った。
「え? いや、ぶっちゃけ興味はあるんだけど、俺のダンジョン報酬、これ? お姉さんとの一夜は?」と隼人が言い返す。
「あぁん? だからお前はわたしの好みじゃねぇんだっつの。お前なんだオナホで十分なんだよ。ほら、気持ち良いのが好きなんだろ? 悦べよ」
「いや、こう粗雑にされるのは別に好きじゃないと言うか……」
隼人が愕然としている。だが、
インガおほぉ。
〝世界の使者〟にも粗雑に扱われる、これぞ「ざまぁ」クオリティ。
だが、そこに待ったが入るのである。
「パープル殿、こやつの無礼には代わりに謝罪する。だから何か有用なものを授けてやってはくれないか? これでも一応パーティメンバーなのだ。一応」
「おっさん……」
と、取りなしてくれた『チアガール』マッチョマンに隼人がキラキラとした視線を向けるが、今の言葉ですでに隼人の扱いが分かるものである。
「ちっ、しゃーねーなー」
とパープルはふんぞり返る。その拍子に零れ落ちそうなたわわがたぷんっと揺れ、また隼人が目を奪われて鼻の下を伸ばす。誠一はもう焦点を合わせないようにして遠くを見ていた。
「お利口よ、いっくん」
グッドアクション!
恵実に褒められた。
「んじゃあ、まあこれなら良いだろ」
と、パープルは指を鳴らした。すると〈魔法のオナホ〉が消え、隼人の手には一本の剣が握られていた。
見るからに立派な剣である。
「ダンジョン装備の名剣だ。お前の〝意志力〟に反応して強くなる。で、良いか?」
とパープルがおざなりに言う。
隼人は、〈魔法のオナホ〉から変わった名剣を見ていた。
「おい隼人、お前、さっきの方が良かったとか思ってないだろうな?」
『チアガール』マッチョマン、鋭い。
「いいいいいや! そそそそんなことは思ってねぇし!」
バレバレだね。
「んじゃあ、これで全部だな。ちなみに、この火山内部の領域は、一度クリアしたら封鎖される」
『なっ⁉』
と、なんでもないことのように言ったパープルに、一同は驚愕させられる。
「んで、ダンジョンコアは、十階層が出来て、そこに置かれるから。このダンジョンを完全攻略したかったら、そのダンジョンコアを壊すことだな。で、ここでわたしはさよならだ。もしも他の特異ダンジョンのこうした隠しステージをクリアすれば、逢えるかも知れねぇけどな。ま、〝世界の使者〟に選ばれるのはわたしだけじゃねぇから確率は低い……、いや? これで縁が結ばれたから、ちょっとは高くなるのか? ま、ひとまずはこれっきりと思っておいてくれ」
「そんな、美女とのワンナイトラブが……」
「この産業廃棄物、ここに残しておいたら一緒に封鎖されないかしら?」
ダンジョンにゴミを捨ててはいけません!
隼人の言葉に恵実が絶対零度の視線を向けている。
すると、この広間の床から光が放たれ始めた。
「じゃーな、プレイヤーたち。「世界」はダンジョンとお前らの相互作用を観察している。楽しめ、それが〝世界の戯れ〟だ」
そんなパープルの言葉を後に、誠一たちは光に包まれ、目を開けると、ダンジョンの外に立っているのであった。
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