青空の下の人は、隣でした67〜69

《第67章 夜の公園と、弱音》


その日の夜。


拓海とは、ちゃんと仲直りした。

手も繋いで、「また一緒に探そう」って笑い合って。


それなのに——


りなは、部屋のベッドに座ったまま、

天井を見つめていた。

胸の奥が、もやもやする。


(……これで、よかったのかな。)


喧嘩したときの言葉。

少し強くなった拓海の声。自分のきつい言い方。


思い出すたび、ぎゅっと苦しくなる。


気づけば、スマホを手に取っていた。かけたのは颯馬。


📱りな

「ねえ、今ちょっと会える? 

 近くの公園に来てくれない?」


📱颯馬

「どした。珍しいな。

 10分で行ける。」


📱りな

「待ってる」


その返信に、なぜか少しだけ涙がにじんだ。


近所の小さな公園。


ブランコとベンチだけの、

子どもの頃に似てる変わらない場所。夜風が少し冷たい。


ベンチに座って待っていると、

遠くから足音が近づいてきた。


颯馬

「……で?なに。夜呼び出しとか怖いんだけど」


パーカー姿、ラフなまま。いつも通りの颯馬。


その顔を見た瞬間、りなの肩からふっと力が抜けた。


りな

「……今日ね、拓海くんと喧嘩した。」


颯馬

「は?」


隣にどかっと座る。


颯馬

「早くね?もう喧嘩?」


りな

「もうって言わないでよ……」


小さく笑いながら、でも声は少し震えていた。


りな

「今日、内見行ってね…… 

 どこ住むかで、意見合わなくて。 

 私、なんか……わがままだったかも。 

 私が悪かったのかな……って。」


沈黙。


夜の風が、木を揺らす音だけが聞こえる。


しばらくして、颯馬がぽつりと言った。


颯馬

「……りなさ。」


りな

「ん?」


颯馬

「それ、"悪い"とかじゃなくね?」


りな

「え?」


颯馬

「一緒に住むんだろ? 

 だったらぶつかって当たり前じゃん。」


りなは顔を上げる。


颯馬は前を向いたまま続けた。


颯馬

「遠慮して何も言わないほうが、 

 よっぽどヤバいだろ。 

 言い合えるってことは、 

 ちゃんと本音ってことだし。」


少し間をあけて。


颯馬

「……俺なんか、 

 りなと喧嘩するのは学生で 

 あんまり大きいことではないし。」


その言葉に、胸がきゅっと締めつけられる。


りな

「……颯馬。」


颯馬

「だからさ。」


ふっと笑って、りなの頭を軽くぽんっと叩いた。


颯馬

「ちゃんと恋人してんじゃん。」


りな

「……なにそれ。」


颯馬

「褒めてんの。」


りなは小さく笑った。

気づいたら、さっきまでの不安が少し軽くなっていた。


りな

「……ありがとう。」


颯馬

「ん。」


りな

「やっぱさ、颯馬って安心する。」


颯馬

「それは拓海がいて 

 こっちは複雑なんだけど?」


りな

「ふふ。」


夜空を見上げる。


(ああ……私、ちゃんと前に進んでるのかもしれない。)


恋人がいて。

でも、隣には幼なじみもいて。

どっちも、大切で。


りな

「……よし。もう大丈夫。 

 聞いてくれてありがと。」


立ち上がる。


颯馬

「いつでもどーぞ。」


りな

「またね。」


少し歩き出してから、颯馬が後ろから言った。


颯馬

「またね。 

……拓海、いいやつだから。」


りな

「うん。」


颯馬

「泣かされたら言えよ。」


りな

「言う。」


颯馬

「ぶん殴るから。」


りな

「やめてよ!」


二人で笑いながら、お互い家に帰る。


子どもの頃と変わらない距離感。


でも——


もう、恋ではない。


これはきっと、家族みたいな愛情。


りなは、そう思った。


《第68章 「ありがとう」をちゃんと伝えた朝》


翌朝。


カーテンの隙間から、やわらかい光が差し込んでいた。


りなは、ベッドの中で目を開ける。


昨日の夜。公園で颯馬に話を聞いてもらって、

泣きそうになって、笑って、


——少しだけ、強くなれた気がした。


(……ちゃんと、言おう。)


スマホを手に取る。拓海に電話する。


📱りな

「おはよ、 

 今日、仕事前にちょっと会えたりする?」


📱拓海

「起きてますよ

 今から行きましょうか?」


📱りな

「うん、来てほしい」


電話切った後、少しだけ照れる。


(なんか……彼氏呼ぶみたいじゃん……)


いや彼氏なんだけど。


ひとりで顔が熱くなっていると——


ピンポーン。


りな「はやっ!?」


慌ててドアを開ける。


そこには、いつもの優しい顔の拓海。

少し寝ぐせがついたままのラフな格好。


拓海

「おはよう。」


りな

「……おはよ。」


朝の静かな空気。二人きり。


なんだかそれだけで、胸がくすぐったい。


部屋に入って、ソファに並んで座る。


少し沈黙。


拓海

「……どうしました?」


りな

「え?」


拓海

「なんか、改まって呼ぶから。」


りなは、ぎゅっと指を絡めた。


そして、まっすぐ拓海を見る。


りな

「昨日ね……

 颯馬と少し話したの。」


拓海

「……はい。」


りな

「喧嘩のこと、ずっとモヤモヤしてて。」


小さく息を吸う。


りな

「でもね、気づいたの。」


拓海の手を、そっと握った。


りな

「……ちゃんとぶつかれるって、 

 ちゃんと好きだからなんだなって。」


拓海の目が少しだけ見開く。


りな

「だから……」


にこっと笑う。


りな

「昨日は、『ごめんね』というより 『ありがとう』。」


拓海

「……え?」


りな

「ちゃんと話してくれて、 

 ちゃんと怒ってくれて、 

 ちゃんと向き合ってくれて、 

 逃げないでくれて、ありがとう。」


しん、と静かになる部屋。


拓海の喉が、こくっと動いた。


拓海

「……それ、僕のセリフです。」


りな

「え?」


拓海

「りなが逃げなかったから、 話せたんです。」


少し照れながら笑う。


拓海

「……ありがとう。」


話したあとに二人で吹き出す。


りな

「なにそれ、そっちも 考えてたの?」


拓海

「心通じましたかね。」


ふふ、と笑い合う。


気づけば、手はずっと繋いだまま。


親指がそっと触れて、それだけでドキッとする。


拓海

「……りな。」


りな

「ん?」


拓海は少しだけ近づいてきて、


口に、ちゅっと軽くキスした。


りな

「……っ!?」


拓海

「朝の挨拶です。」


りな

「そんなの初めて聞いたんだけど!?」


顔が真っ赤になる。


拓海は優しく笑った。


拓海

「これからルーティン 

 増やしていきましょう。」


りな

「うん!って時間!やばい! 

 仕事に行くね!」


拓海

「行ってらっしゃい!」


——ああ。


(私、この人のこと、ちゃんと好きになってる。)


胸の奥が、じんわりあたたかかった。


《第69章 いつもの3人ごはん》


その日の夜。


📱颯馬

「今日ヒマ? なんかメシ食わん?」


相変わらず雑なLINE。


りな「行く!」

拓海「行きます」


秒で決定。


近所のいつもの定食屋。


油の匂い。ガヤガヤした声。


この感じ、懐かしい。


りな

「ただいまーって感じする〜」


颯馬

「店だからなここ。」


拓海

「落ち着きますね。」


3人でテーブル席に座る。


自然と、りなの右に拓海、左に颯馬。


この配置も、なんか定位置みたい。


りな

「なに食べよっかな〜」


颯馬

「また魚だろどうせ。」


りな

「なんでわかるの!?」


拓海

「僕も魚にしようかな……」


颯馬

「真似すんなよ!」


くだらないやりとり。


でも、それが楽しい。


料理が来て、


りな

「いただきまーす!」


一口食べて、


りな

「うまっ……幸せ……」


颯馬

「安い幸せだな。」


拓海

「そこが可愛いんですよ。」


りな

「え、今サラッと口説いた?」


拓海

「無意識です。」


拓海

「あ、りな ほっぺについてる」


拓海はりなのほっぺに口で取ろうとしてくれた。


りな

「///恥ずかしいから 自分でやるよ笑」


颯馬

「やめろ目の前でイチャイチャすんな。」


3人で笑う。


何も特別なことはない。高級でもない。


ただ、ご飯食べて、笑ってるだけ。


でも——


りなは思った。


(ああ……この時間、好きだな。)


恋人がいて。親友がいて。


どっちも隣にいる。


昔とは違うけど、でも、ちゃんと今の形で、ここにある。


りな「……ねぇ。」


2人

「ん?」


りな

「これからも、たまに3人でご飯しよーね。」


颯馬

「当たり前だろ。」


拓海

「予定、空けとくね。」


りな

「約束ね!」


小指を出す。


「子どもかよ」って言いながら、2人ともちゃんと指を絡めてくれた。


——変わったけど、変わらない。


それが、今の3人の距離だった。


🌸ここまで読んでくださりありがとうございます!


この作品は、私が夢の中にでできた物語です。


💌 続きが見たいと思ってくれた方へ


「続き読みたい!」「最後まで見てみたい!」「更新希望!」など、


コメントやメッセージで教えていただけると嬉しいです🩵今後の公開ペースの参考にさせていただきます。


あなたの一言が、物語の続きになります。お待ちしております🙇‍♀️

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る