第12話 変態アンテナ
「よし、皆それぞれ買い物も済んだことだし、お昼ご飯の時間だ! 集合場所はここライカヤ広場、僕達はあそこのケーキ屋に寄ってくるよ。二人も何か食べておいで」
「あそこのケーキ屋、ショートケーキも美味しいですが、シュークリームも絶品なんです。お金はたんまりありますから食べ放題コースにしませんか? ショートケーキを口いっぱいに頬張りたいんです」
エルンとおさげは楽しそうにキャッキャしながら駆け出す。おさげがシュークリームを頬張り、りすのように頬を膨らませている光景を想像した。
少女組の背中が見えなくなったことを確認した俺とガーナは、顔を合わせ頷く。
二人で足を運ぶその場所。
メイド喫茶。
明治時代に原型が生まれ、秋葉原を中心に広がっていった日本の飲食店。メイド衣装の定員が客人を主人としてもてなすのが特徴だ。
エスタリルにメイド喫茶があるのは、エスタリルを危機から救ったかつての転生した勇者が広めたらしい。他の店も地球の文化が垣間見えるのはその為だ。
「楽しそうだね。我も輪に混ぜてくれ」
「わ! 急に現れるなよ変態。変態アンテナが反応したのか?」
俺達二人を覗き込むように見るアンリ。イタズラな笑顔を浮かべたアンリの目線がいつもより下にあることに気づく。
長い髪を後ろに纏め、髪型がロングからポニーテールに、服装も蔦から女の子らしいものへと変わっていた。シュシュの代わりに鈴蘭が巻き付けてあり、髪を揺らす度リンリンと音が鳴る。
「玉座はどうしたんだ? 一体化している訳じゃなかったんだな」
「ああ、一体化という解釈は大方あっている。玉座無しでは神格を得ず、今の我は少し力のあるただのいたいけな少女なのだよ。街中玉座で行動したら目立つだろう? 寧ろ外ではこの状態が普段通りなんだ。……玉座だけか? 感想は」
「服装似合ってるよ。可愛いんじゃない?」
「お? 素直に言うじゃないか。ふふ、我は嬉しいよ」
微笑むアンリにガーナは問いかける。
「神格って、花の姉ちゃんは神様なのか?」
「ガーナ・アルバートといったな。まあ、植物と少女を愛でる者・アンリ、とでも言っておこう。我を知っても何も得ないよ」
女神アンリは自身が神であることを隠しているようだ。面倒事を増やさない賢い選択、目立たないことって大事だよな。どこかの女神と大違いだ。
「汝は眼帯を巻いているが、ファッションという事か? うん、おしゃれで良いではないか。我も汝の真似事をしてみよう」
アンリの左目を覆うように蔦が巻き付けられ、蔦から一輪の白い花が咲く。その白い花は女神アンリと出会った場所に咲いていたものだ。
「いいね、グロシデナの花か。眼帯仲間が増えて嬉しいぜ」
グロシデナ?
女神アンリが言ってたグロシはここから来ていたのか。
丸い看板がある緑屋根のパン屋を右を曲がると、元々細かった道がさらに細くなる。レンガから二色タイルに変わった道を進んで行く。
「あれがエスタリルのメイド喫茶か? 周りとの雰囲気が違うんだな」
通りを抜けた先、街角にあるここメイド喫茶"メイキング+エルフエルフ"は日の光が当たらない静かな場所にある。
エスタリルでは珍しい黒色の壁。ドラセナとポトスに似た観葉植物が並び、スタンド看板にはオムライスのイラストが描かれていた。ネオンで照らされた黒いドアは昼間にもかかわらず大人な雰囲気を醸し出す。
ウキウキな三人はメイド喫茶のドアを開けると、スタッフが颯爽と駆けつける。
スタッフがお約束のような挨拶をし、料金や滞在時間が記されたルールブックを受け取る。三人でそのルールブックを見ていると、エルフが一人こちらに向かって来た。
白いフリフリが豪華に施されたメイド姿のダークエルフが俺達の前に居た。青い瞳を真っ直ぐ向けるその姿はとても可愛いらしい。しかし俺達三人は気づく。
「おかえりなさいませ! ご主人様!」
このダークエルフ美少女じゃなくて美少年だ!!! と。
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