四大属性の四天王から「お願いします!」と手を差し出されています。やめて。

初美陽一@10月18日に書籍発売です

第1話 異世界召喚された途端、四天王に囲まれて「お願いします!」って手を差し出される恐怖わかる?

 私はイザベラ。どうやら私は、異世界召喚されてしまったらしい。

 それだけでも充分に驚きだけれど、どうも最悪なことに、私を召喚したのは世界を滅ぼそうと目論もくろんでいる〝魔族〟という種族なのだという。


 ……いや、本当に最悪なのは、私が今まさに受けている仕打ちだろう。

 私は今、召喚された直後の魔法陣の上で、魔族の中でも最強格の恐るべき存在だという〝四天王〟から――


「「「「お願いします!」」」」


 ――手を差し出されている。

 四天王は〝魔族〟とかいう人ならざる存在の割に、見た目は随分とイケメンだ。しかもそれぞれ個性的で、バラエティ豊か。ここだけ見れば、まるで乙女の夢みたいな光景と思われるかもしれない。


 けれどそれは、ただの夢だ。

 残念ながら、これはそんな、羨ましい状況ではない。

 なのだ。

 だって彼らが、私に手を差し出している理由は――


「俺と!」<火>

「私と……」<水>

「自分と」<土>

「フッ……余と」<風>


「「「「一緒に世界を滅ぼしましょう!!」」」」<四天王>


 ……と、いうことらしい。

 もちろん私は最初に、はっきりと言ってやった。「嫌です!」と。当然だ。見も知らない異世界とはいえ、別に恨みがあるでもなし。世界なんて積極的に滅ぼしたいと思うほど、人間腐っちゃいないつもりだ。


 でも四天王どもは、こんちくしょうどもは、まるで話を聞いてくれない。

 出来の悪いブリキ細工のおもちゃみてぇに手を差し出してきては、同じようなことを言ってくる。しかも私を取り囲んでいる状態だ。せめて横に並べ、横に。大の男どもに四方を囲まれて手を差し出されるの、結構プレッシャーなんだぞ。


 さて、私の返事が芳しくないことで、連中は何やら争い始めていた。

「俺の女に手を(差し)出すな」とか、

「彼女は私のものですが?」とか、

「自分が一番、彼女に相応しい」とか、

「フッ、勘違いも甚だしいな」とか、

 傍から聞いてる分には、見目麗しく個性的なイケメンたちから、取り合われているように見えなくもない。けど実態は〝世界を滅ぼすため〟だ。だからなおさらガッカリだ。四天王おまえらにはガッカリだよ本当に。


 さて、どうやらこの連中は〝召喚の制約〟だとかで、私に力尽くで言うことを聞かせるような真似はできないらしい。ほっ、そこは一安心。

 しかも仲が悪いのか、四天王同士で協力し合うつもりもないようだ。手柄を独り占めしたいのだろうか。愚か、ふふっ、愚かで浅ましい、滑稽ですこと。


 まあ何はともあれ、そんな状況だから、このスカポンタン残念四天王どもは、何やら方針を定めたらしい。


 つまり一人一人、私にアピールしようというのだ。

 見ようによっては口説き落としだ。

 でも実態は、採用面接だ。面接官は私、受験者は四天王こいつら。色気の欠片もねぇ。だからこいつらにはガッカリだ。無駄にツラは良いのがなおさら腹立つ。


 何やら四天王こいつらはそれぞれが四大属性の一つ一つに対応しているらしく、それを私にアピールしてくる腹積もりらしい。

 だから何だ、と私は思う。自信がある、絶対に靡かない自信がある。ばっさり切って落としてやる。世界を滅ぼすなんて話に、乗っかるはずがない。


 ぜ、絶対に乗っかってなんかあげないんだからねっ!


 どうだ、ツンツンと突き放しておいて、ちょっぴり甘い顔を見せてやる。これはきっと後の世に流行るぞ。私はイザベラ、時代の先をゆく女。甘く見たら火傷するぞ。まあ心の中で思っているだけなので、伝わらないだろうけども。


 とにかく私が、四天王どもから差し出された〝手〟を取ってしまった時点で、契約は履行されてしまうとのことだ。そうでない限り、私が立っている魔法陣の外側からは、結界に遮られて私には干渉できないらしい。

 召喚する側にも、一方的に召喚するなりの制約がある、ということだ。


 つまり四天王にとって重要なのは、私が誰の〝手〟を取るのか。

 タイムリミットは魔法陣の魔力が尽きるまで。魔力が尽きれば、私はそのまま元の世界へ送り返されるという話だ。


 だったら、誰の手も握り返さず、壮絶にお断りしまくって帰還してしまえばいい。

 相も変わらず囲まれた状態で、憮然する私へ向けて、ついに。



 四大属性の四天王どもによるアピール合戦の火ぶたが、切って落とされる――!

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