鏡の檻の中の愛は、甘すぎて死ぬ。~写真部の後輩の危険な「お守り」~

Çava

1 大好きな先輩との、二人きりの密室デート

二人きりの、特別な撮影会

 放課後の写真部の部室は、私にとって世界で一番、息がしにくい場所だ。

 もちろん、イヤな意味じゃなく――その逆だ。

 窓から差し込む夕日が、部室の隅にある古い棚や、使い込まれた机を、オレンジ色に溶かしている。


 そして、その光の中に――大好きなしおり先輩が座っているから。


結月ゆづきちゃん、準備はいい?」


 先輩が、愛用のカメラをバッグにしまいながら、私を見た。

 栞先輩は、学校中の誰もがあこがれる、三年生の部長だ。

 すずやかな目元、さらりと流れる黒髪。

 先輩が動くたびに、石けんのような清潔な香りが、ふわりとただよって、それが私をたっぷりと満たしてくれる。


「……はい! いつでも行けます、栞先輩」


 私は必死に、普通の後輩を演じて返事をした。

 本当は――ドキドキが激しくて、止まらなくて、たまらない。


 だって今日は、先輩と二人きりで、今はもう使われていない「旧校舎」へ、撮影に行くことになっているから。


「これ、先生から預かってきたの。今日は特別に、貸してくれるんだって」


 先輩が、指先で軽く振ってみせたのは、一本の古びた銀色のカギだった。

 校舎の端にある、立ち入りが制限されている古い建物。


 そこへ二人だけで入れるという事実に、私の妄想は止まらなくなる。

 まるで、放課後の学校に閉じ込められた、二人きりの世界……。


「あれ……結月ちゃん? 顔、赤いよ。やっぱり、少し怖い?」

「えっ!? あ、いえ、全然だいじょうぶです! 楽しみ、なんです。先輩と……撮影できるの」


 あわてて首を振る。


 ――危ない、顔に出すぎた。


 先輩は「それなら、よかった」とやさしくほほえむと、部室を出て、私の先を歩き始めた。


 渡り廊下ろうかを進むにつれ、部活動にはげむ生徒たちの声が、遠ざかっていく。

 新校舎の中のざわめきが消え、次第しだいに、ひんやりとした静かな空気が私たちを包み込む。

 旧校舎の入り口で、私たちを待っていたのは、重たい木の扉。

 それは、外の世界を切り離そうとするみたいに、静かに口を閉ざしていた。


「……さあ、着いたよ。私たちの『秘密の撮影会場』に」


 先輩が、カギをカギ穴に差し込んで回すと、カチリ、と、かたい音が響く。

 そのまま扉を開けるのかと思いきや、先輩はなぜかそのまま立ち止まって、私の方へ向き直った。


「結月ちゃん、ちょっとこっちに来て」

「え、はい……」


 手招きされて、私は一歩、先輩のふところに飛び込むような形で近づいた。


 ――えっ? 近すぎる!


 もう、先輩の長いまつ毛の一本一本まで見えるほどの、とっても近い距離。

 私の心臓は、もうドラムの連打みたいに、激しく鳴り響いていて、それが先輩にバレてしまわないか、ヒヤヒヤする。

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