AIの躍進が目覚ましいこの頃。
いっそ、すべてお任せしてしまったら良いのでは……と思うのも人情かもしれません。
非効率な事務作業や、恣意的で偶発的な色メガネによって歪められない、「純白」の社会が形成される可能性は、大いにあり得ます。
本作の舞台は、そのような日本。
国家運営に先立って、とある重要施設がAIの管轄化に置かれています。
それは刑務所。
世界に先んじる叡智「アヴァロン」が刑期、更生方法、被害者補填など一切を取り決める、最高峰の隔離システムです。
しかし……なぜ?
間違いようのないはずの機械が「刑」を言い渡したのは、無罪であるはずの人々。
奇しくもアヴァロン創生に関わった、技術者の一家です。
収容された幼馴染のために、主人公は動きます。
頼りは一緒に弾いたスタインウェイと、鍵盤を操る自身の指。
電話や交通網もシステムの範疇のため、うかつに悩みも話せません。
アヴァロンとの闘いは次第に――――
先端技術を渇望する主体と、巻き込まれるしかない周囲。
これは人類が繰り返してきた、どうしようもない流れの一つでしょう。
よって現実にも、近しい将来が迫ってきているかもしれません。
行き先は白か、黒か。
いや……そんな明確な色なのか、どうか。
アヴァロンの、そして人々の功罪。
考えさせられる作品です。
主人公の藤田直の親友兼ヒロイン道井桃は日本統制の国家基盤AI『アヴァロン』に犯罪の容疑をかけられ、家族まとめて拘束されてしまう。
しかし、それは冤罪だった。
な、なんだってえぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?
桃から送られてくる楽譜から、音の紋様を文字に変換し、直は少しずつ真相と桃救出のための手段に奔走する。
大ヒット上映中!コナン君ばりのハチャメチャ、アクションシーン! もうコナン君の題材に出て来てもおかしくない、推理と手に汗握る展開!!
進化し過ぎたAIは果たして人類の敵なのか、味方なのか。
真実はいつも一つ!!
……科学ノ発展ニ犠牲ハツキモノデース。
SFを主戦場にする晴久さんの最新作です。10万字弱の長編です。
AIの進化によるシンギュラリティと、そこから噴出する矛盾をテーマにしています。
ストーリーは、主人公藤田直のピアノのパートナーである道井桃が、日本を統制するAIのシステムであるアヴァロンに、家族ごと拘束されてしまうところから始まります。これは冤罪だ、と直感した直は、道井家の潔白を証明するために動き出しますが、桃とのやりとりは全てアヴァロンが監視している。いい方法を考えなければ。
そこで、通信手段として使ったのが「音紋」。桃から送られてくる楽譜を直が演奏し、パソコンでデータ処理をすると、言葉が流れ出すのです。
そうして直は少しずつアヴァロンの核心に迫っていきます。
ネタバレが怖いので、このくらいにしますが、シンギュラリティと、AIの暴走を描いた本作、とても読み応えがありました。音楽で文字データ送信するという発想も斬新でしたし、車がビルに突っ込むアクションシーンなども迫力があり、全体にエンタメ性が高い作品でした。
桃ちゃんの弟の麦君や、直と一緒にアヴァロンに乗り込む彰、敵か味方か分からない阿部さん、などなど、キャラも個性的で魅力がありました。これ、スピンオフで続編も読みたくなりますね。
お勧めの一作です。是非どうぞ。
「間違いを犯さない正義」をプログラムされた鋼鉄の人工知能は、本来なら正しく思考し、人を裁くはずだった。
しかし、その正義のバランスが崩れたとき、罪のない人々の拘留が始まってしまう。
ある日突然、好きな人が監獄に収監される。
しかも理由は冤罪。
日常は壊された。
どうすることもできない直のもとに届いたのは、直と桃にしか弾けない難解なピアノ譜だった。
それこそが、冤罪に抗う唯一の手段と気づいた直は、桃を救うため協力者と共に国家管理AI監獄《アヴァロン》へのアクセスを試みる。
アクション、家族愛、恋愛がバランスよく盛り込まれ、読み応えは抜群。
特に、最初は現実的でどこか冷めていた主人公が、ヒロインの音楽に触れることで、純粋な気持でヒロインを好きになる姿が印象的でした。
それなのに引き離すなんて、……アヴァロンひどすぎです。
主人公はアヴァロンを変えることができるのか。無事にヒロイン・桃と再会できるのか。
最後までハラハラしながら読み進められる一作です。
カッコいい相棒も出てきます。
そして、……あの作品とクロスオーバーしています。そこも楽しいです。
ぜひぜひ。
※完結直前にレビューを書いています。
とても読みやすいのに、スパイ映画の世界のようなスリルと、アクション。
盛りだくさんの作品です。
「なぜあの子が囚われなければいけないのか!?」
少年・藤田直(ふじたなお)の心に火がともり、行動へと変わっていきます。
音の調べに色がついて見えるという特性が、AIの虚を突いた「ある手段」として機能しはじめるとき、今まで出会ったことのない世界が見えた気がしました。
スパイそのもののような病院でのある作戦、奇跡のようなリサイタル体験、読んでいるだけで手に汗を握るカーアクションと、まるで映像作品のような情景がつぎつぎに現れます。
作者の持ち味である近未来SF世界が、まったく新しい切り口で描写されました。
私という読者にとって完結まであと二話を残している段階です。
とても楽しみにしています!
音楽というものは、良くも悪くも人の心に影響を与えるものだ。あるときは、人を癒して嬉しくしてくれる。またあるときは、人を泣かせてブルーにしてくる。本作は、そんな音楽の二面性をよく表していると思うのだ。
本作は、いわゆるディストピアモノである。無実の罪でAIに逮捕された幼馴染を救うため、ピアノ好きの主人公の直がAIを出し抜かんとするSFサスペンスだ。彼の武器は、なんとピアノ。ピアノを通じて謎を解き、メッセージをやり取りしていく。その緊張感と謎解き、そして一人の少年の等身大の悩みと苦しみ、友情が実に魅力的であろう。
時に音楽に笑い、時に音楽に泣く。そんな少年の反逆劇の結末は……?
音が色になり、
色が言葉になり、
言葉が世界を揺らす。
そんな無茶なロマンを、
本気でやり切ってくれる物語。
直の冷めた計算高さと不器用な情。
桃の天才らしい無邪気さと痛み。
麦の重たいほどの信頼。
そして、家族の生活感。
SFの理屈も国家規模の陰謀も飛び出すのに、
最後に胸を掴むのは、
スープの匂いやレシート一枚の重みという、
この地に足のついた奇跡がたまらない。
才能はある。
でも財布がない。
正義はある。
でも誰のものでもない。
その不確定さの中で、
ピアノに賭け、
言葉に賭け、
誰かを信じるしかない少年たちの覚悟が、
笑えるほど青くて、
泣けるほど尊い。
修羅場を真正面から描きつつ、
どこかユーモアを忘れない筆致が、
読み手の心拍を最後まで握り続ける。
世界を救う物語でありながら、
実は――“今日を生き延びる”ための物語。
この続きを待つ時間すら、
もう物語の一部だと感じさせる強度がある。
共感覚(音が色になる)を持つ少年・直の描写がまず美しく、ピアノの響きが視覚と温度を伴って迫ってくる“体験”として書かれているのが魅力でした。
そこへ、耳の聞こえない弟に言葉を届けたい姉・桃の執念が重なり、音の多重和音が偶然ソフトの変換規則と一致して「文字」になる――という設定が、SFとして面白いだけでなく、家族の祈りとして胸に刺さります。
「伝えたい」が技術を越えて奇跡になる瞬間が、本当に綺麗。
一方で、AIが統治する孤島収容施設“アヴァロン”の制度設計が生々しく、正義と効率を掲げながら人間を資産化していく冷たさが怖い。
音楽の温度と、制度の冷酷さの対比が効いていて、読む手が止まりませんでした。
直と桃の関係が「恋」だけでなく「共犯」へ傾いていく気配も良くて、ここからどう転ぶのか(救いなのか、さらに歪むのか)続きを追いたいです。
この作品の舞台は、AIが統治する究極の監獄「アヴァロン」。そこは、私情を排した「完璧な正義」が支配し、一度収容されれば巨額の賠償金を労働で返済するまで決して出られない、絶望の孤島だった……
音を「色」として捉える特別な才能を持つ高校生、藤田直。彼の平穏な日常は、淡い恋心を抱いていた天才少女・道井桃が家族と共にアヴァロンへ強制収容されたことで一変する。
外部との接触が完全に断絶されたはずの監獄から届いたのは、一通の「楽譜」だった……
直がその音色を響かせたとき、ピアノの鍵盤は暗号を解く打鍵へと変わり、楽譜に隠された桃の「真実のメッセージ」を浮かび上がらせたのだった。
国家の巨大な陰謀を前に、少年はただ一筋の旋律を武器に立ち向かう。
論理の冷たさを、芸術の情熱が超える瞬間、読者は、ピアノが奏でる「言葉」の重みに、震えるような感動を覚えることでしょう。
ぜひ、ご一読を!
指紋―― Finger Print――
ならぬ
音紋――Sound Print――
ここで登場する音はピアノだが、奏でられた旋律とリズムとからもう一つの感覚が呼び起こされる――いわば共感覚に近い現象に強く惹かれる。
AI監視下での孤島隔離システム・アヴァロン――そこに想い人・道井桃が捕えられてしまう。
彼女から送られてくる楽譜。そこに込められた暗号としてのメッセージ。
それらを解読するには常人では弾きこなせない超絶技巧の譜面を音に起こすしか方法はない。それを可能とするのは主人公・藤田直ただひとり。
果たして、譜面に隠された真のメッセージの内容とは何なのか?
指先の音から文字への昇華に好奇心をくすぐられ、この物語の設定に引き込まれっぱなしです。
聴覚と視覚との同時刺激――それらが織り成す奥妙な感覚が謎に切り込むハイクオリティなSFドラマです。