第零章 閑話 メアの独白

 世界が、巻き戻されていく。


 ここでは、私は何もすることがない。

 だからこそ、ここで考えをまとめ、言葉にする。


 私の名前は、メア。


「この世界は、恐らくそちらとは異なる――フィクションの世界」


 今までのループで、私が感じ取ってきたこと。

 恐らくそちらの世界には、私たちの使う機体は存在していない。


「そのため、登場する人物・団体・名称等は架空のものであり、実在のものとは関係ない」


 これも、事実だ。



 ――ギアス、発動。

 言語に、世界の「修正」が加えられる。


 これが、私が能力と引き換えに背負ったギアス。

 その名は『明らかな嘘』。


 嘘をつくこと、そのものは可能。

 けれど、その嘘は必ず相手に伝わる。

「これは嘘だ」と、確実に理解されてしまう。


 それが、このギアスの特性。


 だから私は、基本として嘘をつくことができない。

 ついたとしても、意味がないから。


「私は、何度もループを繰り返している」


 事実。

 ゆえに、ギアスは発動しない。


「ループのたびに、年齢を一つずつ失っていく」


 これも事実。

 ただし、失うのは「後」ではなく「前」。


 結果として、私は一年ずつ若返っていることになる。


 意図的な省略は、ギアスの対象外。

 この形であれば、私は“嘘をつかずに”語ることができる。


「今回のループで、舞という――共にループの輪を観測する者を得ることができた」


 これが、今回の最大の成果。

 彼女の頭脳があれば、次のループでは、これまでとは違う景色が見えるはずだ。


「しかし、もう私は限界」


 士郎の指摘は、正しい。


 次の世界で、私は十歳の少女として生まれ変わる。

 積み重なった知識と、未成熟な肉体。

 その乖離に、これ以上耐えることはできないだろう。


「次が、最後のチャンス」


 これもまた、事実。


 いわゆる「ループもの」では、

 主人公が何度もやり直し、最善の未来を選び取る。


 けれど、私にはもう――

 やり直すための余地は、残されていない。


「幸い、残された奇跡の数は回復する」


 最後の奇跡を使い、世界が巻き戻るたびに、回数はリセットされる。

 残りは、六回。


「……そろそろ、始まりの時」


 光の流れが、ゆっくりと速度を落としていく。

 それは、私が「この世界」に戻る合図。


「……舞、お願い。あなたがキーになるはず」


 その願いと共に。

 世界は、完全に巻き戻された。

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