アルトの選択 ー王権ダンジョンの秘宝ー
@kkkk7
第1話 最強の王アズトール
その国の始まりは、一つのダンジョンだった。
――王権ダンジョン――
そう呼ばれた、そのダンジョンは、王族だけに開く事が許される特別な扉……
国が出来て以降、その存在は隠され、王族の血筋だけに伝わる秘密となった……
ここはアルカンディア帝国。
ダンジョンと冒険者たちによって繁栄した、人族最大の国である。
アルカンディア帝国の王アズトールは、屈強な体に黄色い髪、鋭い青の瞳した男だ。その姿だけで人々を黙らせるほどの威圧感を放っていた。
アズトールの胸元で揺れる金色の鍵のネックレス、帝国の紋章が刻まれたそれは、王の証にして象徴だった。
……人々の間ではこんな噂が流れていた……
あの金色の鍵のネックレス……あれは、実はどこか凄いダンジョンに繋がっているんだ!
ダンジョン産業と言えばアルカンディアだろ?それを他の国々にアピールする為に、わざわざ職人に作らせたのさ……
――
アズトール王は、人類最強と謳われた魔法剣の天才。
唯一、剣聖の称号を持っていた。
剣聖……剣を極めし者の最高位の称号。
力で敵を圧倒し、欲しいものは全て手に入れてきた。
暴君と呼ばれながらも帝国を統べてきたのだ。
ただ一つだけ思い通りにならぬものがあった。
……後継者……
どれほどの妃を迎え、どれほどの秘術を試みても、子を授かる事はなかった……
「我は必ず手に入れる……どんな手を使ってでもだ!!!」
ある日Sランクダンジョンと、そのキーが王都に持ち込まれる。王都に持ち込んだのは、白いフードに銀の瞳をした謎の人物だったいう……
ダンジョンにはD→C→B→A→Sとランク付けされておりSは滅多に見つからない最高ランクのダンジョンなのだ。扉とキーを合わせる事でダンジョンの内部に進む事が出来る。
このS級ダンジョンはアズトール王と沢山の兵を引き連れ攻略を開始する事になる。
ダンジョンに入ると、いきなり大きな白い部屋に飛ばされる。
兵達は困惑……アズトール王も驚いた様子だった
「何だ!?この白い大きな部屋は!?入って来た扉が無い……いきなりこの部屋に飛ばされたのか!?」
「アズトール様おそらく、あの不気味なゴーレムがボスでしょう……」
デカくメタリックな金属のゴーレムが綺麗な銀色で装飾された棺を守る様に2体佇んでいた。
「我、セレンティア様の墓守のベネットとゼネット。ここを立ち入る事を禁ずる。」
「セレンティア……??」
「アズトール様、どうしましょう?」
「我に続け!!奴らを殲滅する」
「ノームはどこだ?」
ノームは宮廷高位魔法隊の隊長である。
「は……ここに」
「魔法隊で大規模魔法の展開をせよ……」
「かしこまりました。」
「いくぞ!!皆の者!!!!!!!」
アズトールも魔法剣を発動し、戦いに参戦。アズトールの魔法剣は凄まじく圧倒的な存在感を見せていたが、S級のボスは強力で容易ではなかった。
壮絶を極めた戦いは沢山の死傷者をだしボスを倒す事に成功したのだった。
「良くやった皆の者!!!」
「おおおーーーー!!」
しかし、歓声の中、仲間の死を嘆く声も多かった。ノームもまた、幼少期の頃からの親友を失っていたのだ。
「アズトール様、死んだ仲間はどうしましょう……」
「遺品の一部を持ってかえればよかろう。戦場での死は名誉ある死、誇るのだ!!」
ノームは親友の亡骸の手を掴み静かに……その瞳を濡らしていた……
早速、綺麗な銀装飾のされた棺に近づくアズトール……
中を確認すると透き通る様な銀色の髪と瞳をした女性の死体が置かれていた。
その女性の死体を見た者達は、その美貌に心奪われ言葉を詰まらせる程だった。
「こやつがセレンティアか……お前何者だったのだ??」
棺の中は、セレンティアの死体の他に、人体生成に関する魔導書と謎の壺型の魔道具、そして3cm程の小さな銀色の紋章が入った盾が発見された。
魔導書によると、壺型の魔道具は神秘の壺と呼ばれており、膨大な魔力を溜め込めこむ事で使用可能だというものだった。
使用出来るのは1度きり、人体生成魔法を行う為の貴重な魔道具である。
この魔法は、セレンティアを再度生み出す魔法だった…
アズトールは、人体生成の記述を見た時、胸が高鳴った。
この人体生成魔法とやらを利用すれば、我が悲願の後継者を生み出せるはずだ!!
アズトールは、早速王城の地下に研究施設を作り、魔法研究を行わせる。
「例の魔法の研究準備は整ったか?」
「はい。アズトール様」
「よし、この死体を地下の研究室に運べ」
「はっ!」
ダンジョンで発見された奇妙な死体は王宮の地下で魔法の準備が整うまで大切に保管された。
まだ使用例のない未知の魔法である人体生成魔法を行うために…………
アズトール王はこれに賭けていた……
それから数年後....
後継者を生み出す魔法の研究が完成し、毎日沢山の魔導士が魔力を注ぎ込んでいた神秘の壺が魔力で満たされ使用可能になっていたのだ。
「アズトール様準備が整いました。いつでも魔法を展開出来ます。」
「素晴らしい!今日、この日次期アルカンディア王の後継者が生まれる記念すべき日だ。皆のもの、一度しか発動出来ん。失敗は許されんぞ!!!!」
「はっ!」
人体生成魔法は地下の研究施設の近くに大きな円形の部屋が作られ、そこで全ての準備が完了する。
大きな魔法陣の周りを高位の魔法使い数十名で取り囲んでいた。
中心には祭壇があり、死体と神秘の壺が置かれている。この壺にアズトール王が血を注ぎ、神秘の壺を起動し、魔法が発動すれば完成する……
アズトール王はナイフで腕に傷をつけ血を注ぎ、魔力を込めた。
すると、神秘の壺は赤く光りだした。
「素晴らしい……ついに我の後継者が生まれるのだ……」
その時である……
突然魔法陣の外円が光り出し、準備していた外の防御結界が発動し始めた。
「なんだ?まだ魔法発動の命令は下しておらんぞ!!」
そう……アズトールは魔法陣の内部に結界で閉じ込められたのだ。
奥から王弟であるジルトールが沢山の兵引き連れ姿を現した。黄色の長い髪に青い瞳痩せ型の男だ。
「どういう事……!?ジルトール!!!」
アズトールを見てジルトールはニヤリと笑みを浮かべる。
「あなたが死ねば私が王だ……それにあなたに不満を抱いている者は多い。これはあなた自身が招いた結果だ……」
「ふふふふ……」
ジルトールの不気味な笑みが響いた
「ドンドンドン!!!ここからだせ!!!」
「いくら人類最強のあなたでも、この魔法結界は破れまい……」
「さようなら………」
王権ダンジョンのキーを回収出来ないのは残念だが……仕方あるまい………後程回収するとしよう……
「内部の魔法を発動せよ!!大量の魔力を流し込みアズトールを完全に葬るのだ!」
事態を知らない魔法使いが動揺していた。
ジルトールと繋がっていた高位の魔法使いの指揮を任されていたノームと数名の魔法使いがジルトールに頭を下げた。
「今これより、ジルトール様がこの国の王である!!従えぬ者は国家反逆罪で即刻処刑である!」
宮廷高位魔法隊長のノームは、アズトール王の目的の為ならば、当たり前ように仲間を犠牲する立ち振る舞いに嫌気がさしていた。ノームはジルトールに、この計画の話しを持ちかけていたのだった。
もはや魔法展開を止められる者はいなかった……
「ジルトーーーーーール!!!!貴様ぁぁ!!!!!」
中心の魔法陣が光だし神秘の壺が魔力の渦で包まれ始めた。
「パリンッ!」
神秘の壺は割れ、赤い魔力の渦は、荒れた海の上に出来る渦潮の如く魔法陣内の全てを飲み込み始めた……
その光景を見ていたアズトールの視界を徐々に赤く染めていく……
「これが我の最後たどいうのか……」
ついには、その大きな赤い渦はアズトールを捕らえ、その身を引きずり込んでいく……
アズトールはジルトールを軽蔑した目で睨みつける。
ジルトール、姑息な奴め……
アズトールは赤い渦の方へ振り向き、手を広げる。
「ふん、よかろう!!我の全てを持っていくがいい!我の悲願は今日達成されるのだ!!!」
赤い渦は、謎の女性の死体とアズトール王を呑み込むと、赤い魔力で渦巻く赤い球体となった。
ノームの計画を聞いた時、ジルトールには断る理由がなかった。自分が王になるチャンスであり、目障りだった兄アズトールを葬る事が出来る最高の機会であったからだ。
この日その企みが成功し、新たなるアルカンディアの王、ジルトール王が誕生したのだ。
それから……
ジルトール王が覇権を取ってから300年が経過した……
ジルトール王の子孫は、アルカンディアの実権を握り続けた。
例の赤い球体の地下への入り口は、閉鎖され立ち入り禁止になっており研究施設は取り壊されていた。
だが、300年間高濃度の赤い球体はどうする事も出来ずに放置されていたのだ……
「う……何か聞こえる……何だろう………?駄目だ何も動かせない……」
「いつ見ても赤くて綺麗ね…不思議………ついつい見に来ちゃうのよね。」
「また来るね……」
「まっ待ってくれ……」
好奇心満点の謎の少女は赤い魔力に引き寄せられ、閉鎖された古い扉の隙間から時々見に来ているみたいだった。声だけが聞こえてきて、それが唯一の楽しみになっていた。
ある日、僕は祭壇の上で目が覚めた。
「うっ、体を動かせない……」
金と銀が混じった髪で瞳の色が濃い赤い目をしている美少年だ。
なんと、大規模な人体生成魔法は300年の時を経て完成したのだ……
「ここは?どこなんだろう?」
数時間後、体がある程度動くようになったので、祭壇の上で座っていると、祭壇の下にある金色に輝く鍵を見つけた。何故かこの鍵にとても惹きつけられた。
「不思議な力を感じる鍵だ……」
これを掴み取り首にかけた。何の鍵なんだろう?
それから数時間後……
トコトコトコ……
足音が聞こえてくる……
「きゃー!!」
同じ歳ぐらいの髪が黄色で瞳が青色のとても可愛らしい女の子がやってきた。
逃げようとしたので、僕は必死に彼女を止めようとした。
「ちょっと待って!!毎日ここに来てお話ししてた子だよね!僕も会いたかったんだ!」
女の子は振り返り、驚いた顔してこっちを見た。
「そういえば……綺麗な赤い玉が消えてる……あれはあなただったの?」
赤い玉??何のことだろう?とりあえず、話を合わせよう……
「そうだよ……君が来るのをいつも楽しみにしていたんだ…
「というか何で、裸なの!?」
女の子は赤面していた……
「裸なのは……覚めた時にはこうだったんだ………ごめんなさい……」
「ほんとに!? じゃあ今目覚めたの?ちょっと待ってて!」
そう言うと女の子は走って行った。数分後、服と食料を持って戻って来てくれた。
「あたしはリアトール。リアでいいわよ!あなたのお名前は?」
名前?僕の名前はなんなんだ?
「え……と……分からない……」
「そうなの?可哀想だからあたしが名前を付けてあげる!」
初代アルカンディア王アルトールからとって……
「うーん……じゃあアルトでどうかしら?」
「……じゃあそれにするよ!」
僕は、この際、名前なんて、なんでもよかった……とりあえずリアとお話し出来て良かった……
「アルトよろしくね!それと、ずっと気になってたんだけど、その綺麗な鍵は何なの?」
「うん?これ?拾ったんだ……」
「取らないから、ちょっと見せてくれない?」
「うん……いいよ」
外してリアに見せてあげた。
「不思議な鍵ね……あれうちの紋章が入ってるわ!」
「これ?」
「そう…これうちの紋章なの……何の鍵かしら………返すわね……」
それから毎日決まった時間に食べ物を持ってリアは会いに来てくれた……楽しく色々教えて貰ったりお話したり……僕の唯一の楽しみであった……
ある日、リアから魔法の事を聞いて凄く興味を持った……僕も使ってみたい……
「リアは魔法を使えるの?」
「使えるわよ!いつも教えて貰ってるからね!」
「へぇー何かやってみてよ!」
リアは魔法を展開し、水の玉を出して見せてくれた。
「……これが魔法……リア凄いや!!」
リアは自慢げだった。
「あたしって魔力量も凄く多くて、魔法の天才って先生から言われてるのよ!それに、リンデブルク魔法学園に行く事に決まってるんだから!」
「何それ?凄いの?」
「リンデブルク魔法学園は、この国で最高の魔法学校なのよ」
「ふーん……リアは凄いんだ!」
「ふふ……じゃあ簡単な魔法を教えてあげる!」
「魔力は感じ取れる?」
「魔力って、この不思議な力の事?」
「そうよ!」
僕は何故か魔力は人一倍感じることが出来た。
「じゃあ大丈夫ね!」
リアは紙とペンを持ってきて簡単な魔法陣を描き始めた。
「これを頭の中で描いて魔力を水に変換するイメージするの!魔法はイメージが大切なのよ!」
しかし、僕は一切魔法が使えなかった……どうして使えないんだろう……正直ショックだった……
「元気出して!いつか使えるわよ!魔法を使えない人なんていないんだから!!」
「今日はここまで、また明日来るね!」
「うん……待ってる……」
一人の時間、言われた通り魔法を練習するも何故か一切使う事が出来なかった。
僕、才能ないのかも……
それから数日ぱったりとリアは会いに来てくれなくなった。
何故なんだろう……嫌われたかな……?それにお腹空いたな……
リアから、ここを動かないでと言われており、僕はリアとの約束守っていたが、流石に辛くなっていた。
リアに会いたいな……
トコトコトコ……
足音が聞こえてきた……
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