5話 魔法と呪いと源の情けなさの説明

 源をなんとか宥めた四人。それから一通り、源から事情を説明された。


「……えーと話を要約すると。源さんの先祖が凄い魔女で、その先祖の敵の魔女が源さんの家系に掛けた呪いのせいで、源さんの運命の相手である中島はあんなことになっちゃってて、それで源さんと中島が恋人同士になると世界が滅ぶ。だから俺達に二人が結ばれないよう手伝ってほしいと?」


 落ち着き友が、源の説明を要約する。


「あ、はい。だ、大体分かりましたか……ね?」

「「「「いや全然」」」」

「あ、ですよね……」


 四人は、源の話が全然分からなかったのだった。


 まず四人は、土下座で懇願していた源をなんとか宥め、彼女から事の経緯を聞くことにした。

 まず源は第一声に、


「私、実は魔女の家系で……」


 と語り出した。

 なんでも源の先祖はそれはそれは凄い魔法使いだったらしく、千年以上前は魔法使い界隈でブイブイ言わせてたぐらい最強だったそう。因みに今の源家は何の変哲もない一般家庭らしい。


「一応、家の倉庫には家系に関する文献と、あと魔導の書があったので、間違いないかと………」


「「「「??????????????????」」」」


 四人はこの時点で話についていけてなかった。

 しかしそんな心情を無視して源は「本題はここからです」と話を進めた。


「私の先祖である魔女『源・ランバート・ジェシ子』さんは、魔法界随一の魔法使いだったんですけど、同時に性格が凄く悪かったそうで」


 低いトーンで語る源。


((((源・ランバート・ジェシ子……))))


 凄い名前だな、と四人は思いながら、耳を傾ける。


「酒癖が悪くて、知人には借金をよくして、暴言暴力も当たり前にしてて。仕事もよくさぼっていたそうで、当然人に恨まれることも多かったそうです」


 源はどこか申し訳なさそうだった。自分の先祖がそんな体たらくなら無理もないかもしれない。


「そして、彼女に恨みを持つ敵対していた魔女が、彼女の家系に、つまり源家に二つの呪いを掛けたんです」


「呪い? どんな?」


 その問いに、源は答えづらそうに返す。


「あ、えと、『源家の人間が運命の人と結ばれると世界が滅ぶ』呪いです」


「「「「はい?」」」」


「な、なので私が運命の人と恋仲関係になると、その………世界が滅びます」


 と、いう事なのである。

 その呪いの効果は凄まじく、ジェシ子の代から今現在までずっと継続してるそう。なので源家の人間は代々運命の人以外の人間と結婚いる。源自身も、源の両親もれいがいではないらしい。


「ちょ、ちょっと待ってよ。色々ツッコミたいけど、そもそも運命の相手って分かるもんなの? 簡単に言っちゃってるけども」


 アホ友の当然の疑問に、「それが二つ目の呪いですよ!」と源が大声で指摘する。


「もう一つの呪い。それは『運命の相手が超人的パワーを得て猛アタックしてくる』呪いなんですよぉ! その呪いに掛かった人間は、一般人とは比べ物にならない身体能力で、源家の人間に猛アプローチしてくるんですぅ!」


 源が投げやり気味になって叫ぶ。


「ちょ、超人的パワー?」


「それって……」


「そうですよ! 今の中島さんの状態です! 私と中島さんは運命の相手何ですよ!う、うぅ……」


 すると当然、源が泣き出す。おいおいどうしたと四人が慰めた。


「ご、ごめんなさい取り乱してしまって」


 と、源は謝りながら涙を堪える。

 それから源は、すぐに決意を固めた表情を浮かべる。表情がコロコロ変わる奴だなと四人は思った。


「そこでお願いです、皆さんに中島さんを停めて欲しいんです。もし仮に『中島さんの告白を承諾した』ら、その瞬間に世界は崩壊の一途を辿るんです。でも多分私一人じゃ無理です。あんな猛アプローチされ続けたら、意志の弱い私では心折れます。

 て、てゆうかあんなカッコいい人に告白されたらクソザコ陰キャナメクジの私にはもう一溜まりもありませんよ! 惚れちゃいますもん!本当に世界が滅んじゃいます! なのでどうか、お願いします!」


 ベッドの上で、再び土下座し出したのだった。


 そして、話の冒頭に至るのである。


「ど、どう思う? 信じる?」「いや~。どう思うって聞かれても……」「いやまぁ確かに今日の中島は色々可笑しいけどさぁ」「だからって……ねぇ?」


 こそこそ話をする四人は、源の話に懐疑的である。

 当然無理もない。急に魔女だ呪いだとファンタジー用語でファンタジーみたいな説明をされたら、源の頭がファンタジーなんじゃないかと疑ってしまうのは無理もなかった。だが中島の様子が可笑しいのも、中島が屋上から落下しても無傷なのも事実である。

 四人は若干混乱した。頭がファンタジーになりそうだった。


「あー、普通に断ることって出来ないの? 一言『ごめんなさい』すれば、」


「それが出来てたら陰キャしてませんッ‼」


「うぉビックリした」


 誠意の籠った大声に、質問した気さく友は驚く。


「じゃあ、アタシらが中島に伝えるん? 『源さん、お前の事嫌いだから』って」


 威圧的友の意見に、源が首を振る。


「……だ、駄目なんです。それが駄目なんです。〝タブー〟なんですよ。呪いのルールに違反してしまうんです」


「ルール?」


 源が頷いて答える。


「呪いには『犯してはいけない4つのルール』があります。基本その4つのルールを犯した時点で世界は滅びます………」


「はぁ? なんだそりゃ、どんなのだよ?」


 怪訝そうに気さく友が聞き返す。

 源は、順々に4つのタブーを語る。


「まず一つ目が先程から話している通り、〝源家の人間が運命の相手と結ばれること〟。これは私が中島さんの告白なんかを受け入れた時点で世界が滅びます。

 そして二つ目。〝呪いの内容を運命の相手に伝えること〟。つまり今話している事柄すべてを中島君に話してはいけないんです」


「な、なるほど? えっと、じゃあ中島に『お前と源さんが付き合うと世界が滅ぶぞ!』って言っちゃうと」


「世界が滅びます」


「えぇ」


 アホ友が狼狽する。


「三つ目。〝他者が伝言で、運命の相手へ愛を伝えること〟。例えば皆さんの内の誰かが、『私があなたの事を好きだ』と伝えた時点でアウトです」

「じゃあ中島に『源さんお前のこと好きだってよ』とか言うのはダメなん?」


「その通りです。文章とかで伝えるのも駄目です」


 威圧的友に、源が答えた。


「四つ目は逆に、〝他者が伝言で、運命の相手へ源の愛を否定すること〟。難しく聞こえますが、要は他人が中島君に『私があなたのことを嫌いだ』と伝えるのはダメなんです」


「ん? あ、えーと……つまり?」


「『源さんお前のこと嫌いだぞ!』って中島に噓つくのはアウトってことだろ? 多分、逆にってことは」


「あーなるほど。めんどくさ」


 気さく友の補足説明に、落ち着き友は腑に落ちたようである。

 それから源は深呼吸をしてから、なので、と話を一旦まとめる。


「中島君と私が結ばれると世界は滅亡しますし、他人が中島君へ告白を代弁してもアウトで、でも他人が噓を付いて中島君を突き放すのもアウト。何より呪いの詳細も説明できない。つまり……………」


「「「「つ、つまり…………」」」」


 ゴクリ。四人は唾を飲んで、構える。

 源は一間ためて、そして、


「私が中島君を振るしかないんですよぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおーーーーーっ‼ 私自身が直接中島君を振るしか、世界を救えないんですぅぅぅぅぅぅぅぅうううううーーーーーーーーーーーーーーっ‼ 出来る自信ないですぅぅぅぅぅぅああああああああああああああああああああああああああああああああああああお願いしますぅぅぅぅぅぅぅぅぅううううううううううう手伝ってくださいぃぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーッッ‼‼」


 再び土下座で泣き出すのであった。




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夕方か夜ぐらいに投稿します。

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