魔力量が絶対の世界で、現代戦術を持ち込んだら 最弱扱いの少女たちを最強部隊にしてみた

藤野シン

第1話特殊部隊志望異世界転生する

きっかけが何だったのかは、正直もう覚えていない。

ただ、気づいたときには――俺はもう「特殊部隊員」に憧れていた。


父がミリタリー好きだったのが原因だと思う。

家には軍事雑誌や装備解説本が山ほどあって、同年代の子どもがヒーローごっこをしている横で、俺は父と一緒に自衛隊の特殊作戦群だの、アメリカ陸軍のグリーンベレーだのの話で盛り上がっていた。


普通の子どもなら、そんな憧れは成長とともに冷める。

「黒歴史」として処理されるのがオチだ。


でも、俺は違った。


胸に灯ったそれは消えるどころか、

どんどん冷たく、鋭く、

いつの間にか執着に近い形へと変わっていった。


俺が憧れたのは、スポットライトを浴びる主役じゃない。

世界を救う勇者でも、世界を滅ぼす魔王でもない。


暗視ゴーグルの奥で感情を殺し、

最短・最速・最小の動作で標的を無力化する存在。


――特殊部隊。


空手、ボクシング、剣道、総合格闘技。

学んだ理由は単純だ。


試合で勝ちたい?

違う。


近接格闘、CQCの精度を上げて、

不測の事態でも確実に生き残るため。


全部、「生存率」を上げるための部品だった。


俺は必要な技術を、砂が水を吸うみたいに吸収した。

ただし、それを表に出すことはない。


学校では常に成績トップだった。

体力や筋力だけじゃない。

頭もなければ、選ばれる側には立てない。


友人たちがカラオケだの恋愛だので浮かれている間、

俺は一人で「ブートキャンプ」を続けていた。


筋肉が悲鳴を上げ、

視界がチカチカするまで自分を追い込む。


汗と、硝煙――もちろん妄想だ――にまみれたその時間こそが、

俺にとっての青春だった。


……だったはずなんだ。



学校帰りのある日。

横断歩道を渡る女の子がいた。


次の瞬間、トラックが突っ込んできた。


冷静に考えれば、答えは一つだ。

特殊部隊員なら、見捨てる。


自分の命は、個人のものじゃない。

生き残ることが、最優先。


――なのに。


体が、勝手に動いた。



次に意識が戻ったとき、

俺は泣いていた。


「おぎゃあぁぁぁぁああ!!」


意味不明な叫び声。

自分の声とは思えなかった。


誰かに抱き上げられて、

その温もりに――安心してしまった。


失態だ。

他人に体を預けるなんて、完全にアウト。


しかも俺は、そのまま眠ってしまった。


人前で熟睡?

特殊部隊志望として、ありえない。


……でも、ものすごく、よく眠れた。



しばらくして、ようやく理解した。


俺は――赤ん坊になっていた。


しかも今、俺にキスしようとしているのは父親らしい人物だ。

全力で手足をばたつかせるが、当然ながら無力。


唇を奪われた。


最悪だ。


言葉は分からない。

耳に入る音は柔らかく、抑揚が独特で、意味をなさない。


母乳など飲むか、と意地を張ったが、

空腹には勝てず、四時間で敗北した。


……くそ。



半年もすると、少しずつ状況が分かってきた。

俺の名前はヘイルと言うらしい

父ガイルは若く健康的で、筋肉質だ

母ハイジは赤髪の、よく笑う綺麗な女性。


どうやら俺は、この家の五人兄弟の末っ子らしい。

やたら可愛がられるのも、そのせいだろう。


上の兄弟たちは、妙に張り詰めた空気で生きていた。

理由は分からないが、

俺はそこに巻き込まれずに済んでいるらしい。


それは、ありがたかった。



一年が過ぎ、這い回れるようになった。

窓の外を見るのが好きだった。


田舎だ。

だが、家はやたら立派だ。

父は、この土地の領主、いわゆる貴族だった。



どうやら――前とはまるで違う世界に来てしまったらしい。


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