最初の数行で「悪役だ」と分かる語り口が上手くて、笑ってしまうのに、すぐ背中がひやっとしました。
軽快でテンポがいいのに、扱っているものはかなり重い。
“勇者の物語”の形を借りながら、
実は「裏切った側」の心と罪を正面から見せてくる導入で、読みながら何度も表情が変わりました。
いいなと思うところは、主人公(?)の思考がずれていくところです。
自分に都合のいい“物語”に逃げようとするの、すごく人間っぽい。
そこで一気に真実を突きつけられる展開が、容赦ないのに気持ちいいくらい綺麗でした。
ギャグとして処理できるテンポのまま、ちゃんと「戻れない線」を越えているのが上手いなと。
そして、魔王城の空気がいい。
メイドのアイナさんの柔らかさと、魔王メアリー様の立場の低さが、世界観を軽く見せつつ、逆に「ここ、ただのコメディじゃないな」と感じさせてくれます。
「忘れられない記憶を抱えたまま、
どう生き直すか」
そちらへ踏み込んでいきそうな匂いに、続きが気になります。