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変化が見えやすい物が好き。と言うよりか、分析可能な物が好き。だから日々の状態を淡々と見れる物は、やはり興味を惹かれるものである。そして先日、入浴時に髪の手入れ方法を変えたら、何時もの三倍は髪が抜けたので、改めて分析してみる事にする。
あぁ、なるほど。これを面白いと思うか、面倒と思うかの違いであるか。わたしは面白いと思う側の人間である。
良くも悪くも、極めて鏡花は気まぐれである。満足行くまでその分野を調べた後は、別の分野に移行する。が、本人の中では完全に鎮火された物では無いようで、飽きたのか聞くと『趣味の一つだよ』なんて帰ってくる。知識は吸う物。ある程度の基準に満たしたら、それで良い。
そして今は、肌や髪に目がいっているらしい。だから今日も床に腰掛けながらも、髪を弄る。質感を考えているのか、指で擦ったり毛先を見たり、視線はやや落ち着きがない。
「髪」
「うん?」
俺が話し掛けると、此方を向いた。風呂上がりの湿気った髪のせいか、何時もの赤銅の煌めきはなく、鈍く光る黒鉄の光があった。
「そこまで酷くは無いだろ」
決してパサパサしている訳ではない。触ると柔らかい。長くても変に暴発した寝癖になる事のない髪。決して悩む事はないと思う。しかし女だからこその悩みはあるのだよう。
「いや、昨日、普段の三倍は抜けて」
……其れは本人にしか分からない事であろう。人間、一日に百本の髪が抜けると言われているが、本当の事は分からない。俺がどうこう言える、助けられる立場ではない。
「ちょっと痛め付けたみたいだからね。今日はまた変えたんだよ。トリートメント塗るタイミングとか、塗り方とか、櫛を通すタイミングとか、流し方とか、水量とか」
別世界の言葉が延々と並ぶ。俺の管轄外であるせいか、なんの話をしているのか分からない。が、それなりに意識しているという事は分かった。
俺は鏡花に言わせると『髪フェチ』であるそうだが、俺が惚れ込んだ髪の裏ではやはり、それなりの最善策があるのだろう、
「あ、別に瑠衣たんが髪フェチだからとかそう言うのじゃないよ!! 面倒だとは思ってないし、考えるのはそもそも好きだからね」
「なら別に」
お前、気を使うから。
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