異世界転生で思い出すべき重要事項——嫌われ者の獣人であることと破滅フラグを完全に放棄して、前世の「圧倒的衛生管理知識」だけを抱えて生きる主人公アグー。この振り切った設定だけで、もうこの作品の方向性が決まっている。
レビューで触れられている「タイトルの前半と後半に?となる」という感覚がよく分かる。除菌が命、不潔は許さない、というアグーの偏執と、振り回される相棒との漫才のようなテンポの良い掛け合いが、79,827文字・全10話を一気に読ませる勢いを作っている。衛生観念に馴染みのある読者ほど共感性羞恥を覚える、というのも頷ける。
中華風後宮の優美な文体を手がける同著者が、こんなにふざけ切ったブロマンスコメディも書けるという振り幅に驚かされる。気持ちが疲れたときにリセットするための一作として読みたい。