南極観測隊員になりたくて南極を目指したり、宇宙飛行士になりたくて宇宙を目指したりするのは当然だと思います。
ただ、それ以外に数多ある職業、なりたいもの、近づきたいものなど、はたして「場所」は関係あるのか。
もちろん、その場所特有の何かを得ることはできると思いますが、その何かは本当に必要なのか、はたまた本当にその場所でしか得ることができないのか。
もしかしたら、いつの間にかその場所に行くことが目的になっていて、本来の夢を忘れてしまっているかもしれません。
自分が過去に決めたことが本当に正しい選択だったのか。そして今やっていることが過去に思い描いたこととズレていないか。
夢について、あらためて考え直すきっかけになる作品だと感じました。
この作品に出会えてよかったです!
ありがとうございました!
――パリに来れば、人生が変わると思っていたよ。
そんな一文から始まる、この物語の主人公、ひまりは幼少期、祖母の家で見たフランス人形に憧れて、フランスに興味を持ち始めた。当時の『私』はフランス人形になりたかったのだ。
大きくなると、フランス人形になりたいとまでは思わなくなっていたが、フランスへの憧れは未だ健在であった。大学の授業では第二外国語でフランス語を専攻し、ワーキングホリデーや留学でフランスに行くことを考えたこともあった。
しかし、それは実現しなかった。彼女の日々は充実していて、フランスに行かなくても彼女は満たされていたからだ。
彼女はホワイト企業に就いた。文句や困難のない、平凡な毎日が続いていく。しかしそれは、彼女が虚しさを覚えるのには十分だった。周りは結婚や出産など、きらきらとした人生を送っているのに比べて、自分はどうなのか。果たして、このままで本当にいいのであろうか。そんな思いを悶々と抱えていた彼女は、かつての憧れ、フランスを思い出す。
一年
彼女のワーキングホリデービザの期限は、たった一年だ。けれど、フランスに行けば変わる。フランスで働けば、私の人生すべてがうまくいく。そんな想いを抱えて、『私』はフランスへと飛び立った——といったお話です。
率直に、私は感動しました。この感情を上手く言語化するのは難しいのですが…この作品を読んで、私は『人間』を知ったような気がします。本作には様々な感情が出てきます。憧れ、哀しみ、恐れ、そして覚悟です。
それを表現する、作者様の文才は凄まじく、卓越したものを感じましたし、作者様の人生経験も豊富なのだろうな、と思いました。
人生、何をするにも遅くない、なんてことはないでしょう。歳を取ればできないことは増えますし、気持ちも不変ではない。何より、遅い行動よりも早い行動の方がいいのです。
それでも、もう遅かったかもしれない主人公『私』はフランスに行くのです。その『覚悟』を、自分は皆さんに読んでいただきたいです。
子供、大人。若い人、若くない人。年齢は関係ありません。すべての人に、この作品は心の底からおすすめします。読んだらきっと、自分と同じような感情になるはずです。
ぜひ、ぜひご一読ください!!