~生徒会長に何度も振られまくってるけど~ 俺は彼女を好きでいることを諦めない。

ミハリ | カクヨム

プロローグ:ある少女と、俺たちの出会いについて。

 ザザー……、シュワー……。


 夏の波音は、本来なら心地よいBGMになるはずだった。でも、神奈川県の海岸で迷子になったばかりの小学3年生の俺にとっては、ただの自然からの嘲笑にしか聞こえなかった。


「うわぁ、やばい……。お母さん、どこだろ?」


 俺、鏡悠(かがみ ゆう)は、少し空気の抜けたドーナツ型の浮き輪を抱えながら、熱い砂の上に立っていた。神奈川の太陽はマジで容赦ない。頭から煙が出そうだった。でも、迷子になった恐怖で泣き出しそうになったその時、彼女を見つけたんだ。


 大きな岩の影に、一人の少女がポツンと座っていた。


 彼女は潮風になびく白いサマードレスを着ていた。長く黒い髪は、まるでテレビCMの洗剤で洗いたてのようなシルクのような輝きを放っている。顔立ち?聞くまでもない。小学生とは思えないほど美少女だった。目は鋭かったけど、どこか寂しげな印象があった。


 心臓がドクンと跳ねた。熱中症のせいじゃない、断言できる。


「ねえ」俺は彼女に近づいて声をかけた。「なんで一人なの? 君も迷子?」


 少女は振り向いた。眉間にしわを寄せ、俺を足の先から頭のてっぺんまで……正直、かなり見下すような視線で見つめてきた。子供の頃から、彼女にはすでに「ひめデレ」の才能があったらしい。


「庶民、私に話しかけないで」彼女は可愛らしくも冷淡なトーンで言った。「私は使用人を……じゃなくて、お父様を待っているのよ」


 庶民、だって? へぇ、この子面白いな。


「俺は悠!鏡悠だ!」さっきの呼び方なんて気にせず、俺はとびきりの笑顔を見せた。「待ってるのが退屈なら、一緒に水遊びしようぜ!そんなにムスッとしてたら、せっかくの美少女がシワシワになっちゃうぞ」

「シ、シワシワ!?……」彼女は真っ赤になって立ち上がった。

「失礼ね! 私は水原森川よ。あんたみたいな不審者と遊ぶわけないじゃない!」


 でも、まあ、俺は俺だ。子供の頃からしつこい性格というか、もっと言えば面の皮が厚かった。「その汚い手を離しなさい!」という抗議を十回くらい聞き流しながら彼女の手を引いて、結局俺たちは波打ち際で遊び始めた。

 彼女が「水原王国の城」だと主張する砂の城を作ったり、小さなカニを追いかけたり、波で足が濡れるたびに笑い合った。

 あの時、世界には俺たち二人しかいないように感じられた。神奈川の青い海は、森川がその貴族ぶった性格を忘れて笑う、その美しさの証人だった。


「悠」日が沈み始め、空がドラマチックなオレンジ色に染まる頃、彼女が静かに言った。「明日も……また会える?」

「もちろんだよ!毎日ここで君を探すからさ!」俺は自信満々に答えた。


 だけど、子供の約束なんて所詮は口約束だ。その夜、俺は休みが終わって帰らなければならず、二度と会うことはなかった。何年もの間、あの浜辺の少女の顔が何度も夢に出てきた。

 俺は恋をしたんだ。そう、9歳にして一目惚れだ。馬鹿げてるだろ? でも、それが俺の狂気の始まりだった。


[————————]


 10年の月日が流れた。俺は「青春を謳歌する」という一つの希望を胸に、神奈川の高校に入学した。だけど、運命ってやつは随分と性格の悪いユーモアを持っているらしい。

 入学初日、新入生歓迎会の壇上に立っていたのは、俺がよく知っているあの少女だった。

 あの頃と同じ長い黒髪、同じ鋭い瞳、そして今も健在な「私の方が格上よ」と言わんばかりのオーラ。


 水原森川。彼女はこの学校の生徒会長だった。


 全身に鳥肌が立った。恐怖じゃない。燃え上がるような熱意のせいだ。


「やっと見つけた……」俺はニヤリと笑って呟いた。


 彼女が忘れていても構わない。彼女が今、この学校の『女王』になっていても関係ない。今日から俺は、この誇り高き生徒会長——水原森川を俺の彼女にしてみせる。たとえ千回、一万回振られることになっても、俺は絶対に諦めない!


「会長!好きです!俺と付き合ってください!」


 再会した生徒会室で、俺が彼女に放った最初の言葉がこれだ。


 そして、返ってきた答えは——。


「はぁぁぁっ!?あんた誰よ!?出ていきなさい、この不潔な害虫!」


 彼女は玉座のような椅子から立ち上がり、顔を真っ赤にして出口を指差した。

 ふひひ。いいですよ、会長。これはまだ、始まりに過ぎないんですから。

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