隻腕の冒険者カイルと、彼の義手を整備する義手職人アラン。二人の関係は、義手の整備の間に話をする程度のもの。
そんなカイルの目の前に、失った腕を治す瞬間が訪れる。そんなとき、彼が考えるのはアランのことだった。
ファンタジーの世界観、冒険者や魔法というワクワクする設定はもちろんですが、こちらの物語で特に印象的なのは、どんな傷も癒す方法が既に存在するということ。
つまりカイルの手を治す方法はあるのですが、その手段を目の前にしたとき、彼は何を考え何を選ぶのか、この選択が優しい世界観ととてもうまく絡み合っていて、読み終えてもしばらくあたたかな余韻に浸れました。
失った手と、想像の中での生身の手、喪失だけではないあたたかなものが、二人の関係からじんわり伝わってきます。会話や動作から伝わるこの静かな関係が本当に素敵でした。
思わず深呼吸してしまうような物語をぜひ。