### 山の残り種 実装版(ミヤコ違法飼育小説)### 注釈2つ
山深い谷間に、ぽつんと残った古い農家があった。
かつては広い南瓜畑を耕していたが、主はもう歳を取り、妻を亡くし、子供たちも遠くの街へ出て行った。
現在、畑はほとんど手入れされず、わずかな自家消費用の栗かぼちゃだけが、裏の小さな畑で育っていた。
秋の終わり、老人はいつものように畑へ出た。霜が降りる前に最後の収穫を済ませ、籠に五つだけのかぼちゃを詰めて家へ戻る。土蔵の隅に並べ、冬の間少しずつ食べるつもりだった。
数日後、夕餉の支度をしようと、一つのかぼちゃを台所へ運んだ。包丁を入れると、刃がいつもより柔らかく感じられた。中を割ってみると、橙色の果肉の奥に、小さな生き物が丸まっていた。体長は十センチにも満たない。滑らかな肌は淡い白に橙のグラデーションが混じり、背中から薄い翼が畳まれている。黒い点のような目が、ゆっくりと開いた。
老人は手を止めた。生き物は震えながら這い出し、割れたかぼちゃの片側に寄り添った。弱々しい高音の声が漏れる。「ピュンッ……」と、鈴のような響きが静かな台所に広がった。
昔の習慣がよみがえった。南瓜農家をしていた頃、畑や選果場でこの生き物——ミヤコ――を見つけたとき、すぐに捕獲し、木箱に詰めた。
そして軽トラに積んで遠くの山林へ運び、逃がしていた。近くだと群れで戻ってきて、再びかぼちゃを荒らすからだ。
老人は木箱を探し、生き物を移そうとした。だが、手が止まった。今はもう畑を広げていない。自家消費のわずかなかぼちゃだけ。農家を辞めた今、再侵入を心配する必要はない。老人は箱を置き、割れたかぼちゃを実のまま皿に載せ、生き物をその上に残した。
他のかぼちゃを一つずつ慎重に割ってみたが、もう何も出てこなかった。一匹だけだった。
老人は皿をかぼちゃごと居間の隅に移した。そして、南瓜の収穫に使うプラスチック製のメッシュコンテナで囲った。
生き物は夜になると活発になり、高音の奇声を上げて這い回った。「ミヤコー!!」「アリリーン!!」と響くが、山中の家は遠くに人家もなく、声はただ木々に吸い込まれていった。
最初の日々は、手探りだった。朝になると皿を覗き、かぼちゃが傷んでいないか確かめた。生き物はかぼちゃを食べず、ただ寄り添うだけだった。
試しに台所に残っていたリンゴを薄く切って入れてみると、興味を示し、這い寄ってかじった。それ以来、果物や甘い芋の切れ端を少しずつ与えるようになった。
奇声が激しくなる夜は、メッシュコンテナの上に古い毛布をかけた(※1)。すると声が少し収まった。かぼちゃが腐り始めると、生き物は動揺して翼を震わせ、周囲を荒らした。老人は新しいかぼちゃを割って入れ替え、落ち着くのを待った。
日が経つにつれ、生き物は少し大きくなり、翼で短く浮かぶようになった。老人は古い鳥かごを土蔵から引っ張り出して移し(※2)、底に新聞紙を敷き、かぼちゃを置いた。生き物はその中でかぼちゃに寄り添い、時折老人を見上げた。
山の冬が深まる頃、老人はもう外へ出ることは少なくなった。居間の隅で、かごの中の小さな光を見つめるのが日課になった。誰にも知られず、誰にも咎められず、一匹のミヤコは老人の家に棲みついた。
###以下注釈
『奇声が激しくなる夜は、皿の上に古い毛布をかけた』(※1)この文は、ミヤコの以下の生態を表しています。
- **夜行性と活動性の高さ**:ミヤコは夜行性で、夜になると活発に動き回り、好奇心や本能から高音の奇声(「ミヤコー!!」「アリリーン!!」など)を頻発させる。特に単独の場合、孤独やストレスが蓄積しやすく、奇声が激しくなる傾向がある。
- **ストレス反応と落ち着かせ方**:奇声はパニックや不安の表現で、視界を遮られたり暗闇に覆われたりすると、活動が抑えられ落ち着く習性を持つ。野生では隠れ家(かぼちゃの中や茂み)で休息し、飼育下では同様に「覆う」行為がストレス軽減に有効。これは群れ行動が強い種の特徴で、単独飼育時の孤独感を緩和する手探りの対応として描かれている。
小説では一匹だけのミヤコのため、群れ不在のストレスが夜間に顕著に現れ、老人による毛布かけが即効的な対処法として機能している形です。ミヤコの「うざ可愛い」畜生路線が、飼育者の日常に静かに影響を与える様子を象徴しています。
『老人は古い鳥かごを土蔵から引っ張り出して移し』(※2)「山の残り種 実装版」の記述に基づいて、メッシュコンテナと古い鳥かごのサイズ関係を考察します。
### 記述の流れを整理
- 発見直後:老人は割れたかぼちゃを実のまま皿に載せ、ミヤコをその上に残した状態で居間の隅に移す。そして「南瓜の収穫に使うプラスチック製のメッシュコンテナで囲った」。
- その後:日が経ち、ミヤコが少し大きくなり、翼で短く浮かぶようになった段階で「古い鳥かごを土蔵から引っ張り出して移し」た。
### メッシュコンテナの特徴(収穫用プラスチックコンテナ)
- 南瓜農家が実際に使う収穫コンテナは、通常50〜100Lクラスの大型プラスチック製メッシュコンテナ(通気穴が多く、積み重ね可能)が一般的。
- 横幅・奥行きは60〜80cm程度、高さは30〜50cm程度のものが多い。
- 本来は「かぼちゃを入れる」ためのもので、囲う目的で使うと底面積は広いが、高さが低く、上部は開放的(蓋なしの場合が多い)。
### 古い鳥かごの特徴
- 「古い鳥かご」という記述から、昔の農家が飼っていた小鳥(文鳥や十姉妹など)用の伝統的な竹・金属製ケージを想定。
- 昔の家庭用鳥かごは、縦長設計が主流で、高さ50〜80cm、底面積30〜40cm四方程度のものが一般的。
- 容積的にはメッシュコンテナより小さい場合もあるが、垂直方向のスペースが確保されている。
### サイズ比較の考察
1. **底面積**:メッシュコンテナの方が明らかに広い(収穫用なので横に広い設計)。
2. **高さ・垂直スペース**:古い鳥かごの方が高い可能性が高い。鳥が飛ぶための空間が必要だからである。
3. **物語の流れから見た実質的な「大きさ」**:
- 最初はメッシュコンテナで「囲う」だけで対応できていた(ミヤコがまだ小さく、浮遊行動が目立たなかった)。
- ミヤコが成長し「翼で短く浮かぶようになった」タイミングで鳥かごに移している。
- この移行理由は、浮遊行動に対応するためにより高い垂直スペースが必要になったと解釈できる。
- つまり、単なる容積だけでなく「有効な活動空間」として鳥かごの方が大きい(特に高さ方向)と老人自身が判断した可能性が高い。
### 結論
- 純粋な容積・底面積ではメッシュコンテナの方が大きい。
- しかしミヤコの生態(翼による短距離浮遊)を考慮した「実質的な飼育スペース」としては、古い鳥かごの方が大きい(高さがあり、浮遊行動を許容しやすい)と考察できる。
- 物語の文脈では、老人はミヤコの成長と行動変化を見て「より適切な(=実質的に大きい)空間」として鳥かごを選択したと読める。
したがって、厳密な物理サイズではメッシュコンテナが勝る可能性があるが、ミヤコの飼育という目的においては古い鳥かごの方が「大きい」と感じられる設計である、と言えます。
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