これは骨太で重厚なハードボイルド作品である。チートやハーレムといったトレンドとは一線を画し、終始、硬派な文体で貫かれている作風なのだが、筆者ご自身がライトノベルとタグ付けしておられる以上、本作はラノベである。つまり本作は『ハードボイルド・ライトノベル』という新ジャンルの嚆矢と言っても差し支えなく、テンプレではない一味違った読書体験を求めてカクヨム内を彷徨っておられる方々にはぜひ一読をお勧めしたい。大沢在昌「新宿鮫」のファンの方々にはブッ刺さるのではないだろうか(例えば私)。
しかも主人公がまんまGである。人間が自分をGだと語ったり、Gが人間に変身する小説は他にあるが、まんまG主人公は、私の知る限り、日本、いや世界でも殆ど例がない。
欠落を抱えて社会の周縁で足掻くように生きる彼ら。常に命の危険に晒されながらも、短い生涯を懸命に生きる彼ら。物語は徹頭徹尾、そんな彼らへの愛と敬意で溢れ、深い洞察と研究に裏打ちされている。
彼らの繁華街「ツナギメ」。その猥雑で眩惑的な空気感は、あたかも自分がGになったかのような錯覚に陥り、ふと気づいてしかしリアルな彼らの密集を想像して寒気が走ったりもする。
繁華街の路上でアンダスタンドを見かけたとき。自宅の片隅でハイドシーカーに出くわした時。私はもう、手近な雑誌を丸めたり、スプレーを探したりはしない。おい、お前、鐘夢を知ってるか。お前も短くも熱い生涯を送ってるのか。そう、その生き様に思いを馳せ、そして早く家に帰れと促してやる。(だから顔に向かって飛んでくるのは勘弁してください)