第2話 街を探訪しよう
街に向かって歩いて行く……6万歩ぐらいで入れるだろう。
歩きながらも『流れ』を捉えて詠んではいるが……これは…何だ? 猛獣とも違う……もっと……廻りにかなりの悪意を放っている生き物だ……今向かっているあの街の周囲……6ハリミットの範囲内では詠めない。
草原の中の街……ぐるりを城壁が取り巻いているから『城市』かな……街の中に悪意を放っている生き物はいない……まあいれば、それだけで大騒ぎになるだろうが……今のところのやるべき事は、この世界での言葉の習得だな……まあ暫くは指差し指示と、身振り手振りで何とか伝えるしかない……
うん……それなら、さっき出会った人と一緒に街に入った方が…言語の修得には近道だったかも知れないな……まあ…街に入ったら…困っている人を助けてみよう。
やがて『城市』の門が観えたので、目指して近付いて行く……人が自由に出入りしている……特にチェックされるような事もないようだ……そのまま近付いて行って……スムーズに門をくぐって入った。
衛士か衛兵の詰所のようなものはあるが……特に呼び止められるような事もない……が……10数人から意識的に観察されている気配が『流れ』からも詠める。
そのまま広い通りを歩いて行く……旅館や飲食店……食材や燃料や日用品の販売店……酒場や遊興所……生鮮食品の市場もある……あれは役場か…金融機関か郵便局かな……後ろから誰かが走って来る……男の子だ……私の持ち物を狙っている目的意識が…『流れ』からも詠める。
ぶつかる直前に身を躱して、その子を前に通す……倒れる事もなく立ち止まった彼は……私の顔を見上げて睨むと、舌打ちをして走って行った。
ふふっ……元気な子だな。
左後ろに女の子がいる……私の感覚で言うと9才くらい……花売りの少女か……私に向けた純粋な好奇心と興味が詠める。
ちょっと勿体をつけるように、振り向いて観る……お腹を空かせているな……手招きすると、近寄って来た。
近くで観ると、かなり痩せている……片膝をついて…食べ残していた『パルギ』を取り出し…小さな右手に持たせた……左手にはさっき出会った人から貰った、2枚の硬貨を握らせる……驚いた表情で私を見上げてから……泣きそうな表情で何度も同じ言葉を言いながら、頭をペコペコと下げている……きっと『ありがとう』を意味する言葉なのだろう……右手で頭をスッと撫でて立ち上がり、歩き出す……その娘は直ぐに目の前に回り込んで…赤・青・黄色の花を3本、私に差し出した。
受け取ってから、耳の中のウィスパー・コミュニケーターを右手人差し指で操作し…さっきの言葉を再生させ……真似て発音してみた。
その子は顔をパッと明るくさせ…右手を振りながら小走りに行った……私も右手を挙げた……『ありがとう』が通じたらしい。
さてと……困っているような人は……いないかな……そう思いながら、歩みを進める。
商店街では、値切り交渉をしているようなお客さんと女将さん……隣の店では納品業者らしい若者が、ご主人に怒られている……その隣の店では、様々な景品を引き当てようとしての抽選会かな……活気のある街だな。
中通りを見渡したが、トラブルらしいものは無い……横道と言うか、路地裏も観てみよう。
路地裏にも飲食店がある……夜に開く飲み屋のようだ……酒屋に惣菜屋……何かしらの修理業者かな? やや専門的な業態のような商店が並んでいる。
3本目に覗いた路地で
言葉はまだ解らないが、若者達は私を追い払おうとする。
だが私は絡まれていたおふたりの前に出たので…激昂したひとりが左側から、大股で近寄りながら私の胸ぐらを掴もうと左手を伸ばしたのだが…私はその『流れ』を加速させながら、身を捻って躱したので…その彼はまるで自分で地面を蹴って跳んだように転んだ。
残る3人は強い驚きと怖れの波動を出したが…ひとりが伸ばした棒状の武器を振り上げ…大股で近寄りながら私に向かって振り下ろそうとしたので、私はまた身を躱しながらその『流れ』を加速させ…彼の身体をいなしたので、同じように跳んで転んだ。
残るふたりは完全に威勢を失い、怯えの波動を撒き散らしながら…あたふたと転んだふたりを助け起こして、走り去って行った。
彼らを見送ってから、絡まれていたご夫婦を振り返る……例によって…自分は遠い場所からここに来たばかりで、ここで使われている言葉が全く理解できない旨を『銀河連邦』で、一般的に共通認識されている手話で繰り返し伝えてから…先程に花売りの少女から貰った3本の花を奥方らしき女性に手渡し…右手を左胸に当てて会釈してから、立ち去ろうとする。
すると女性が急いで言葉を発しながら右手を出して私の左袖を引き、更に左手を取ったので…左手だったが握手を交わした。
そして、やや早口で話し始める……右手で『落ち着いて下さい』と示しながら、女性の右手をゆっくりと外したのだが…言葉の意味は解らない。
すると男性が、女性の話に合わせるような意図だと思うが…ジェスチャーで示し始める……話とジェスチャーを3回繰り返して示され……どうやら『ありがとう』に類する感謝の表現と……『お礼をさせて欲しいので、付いて来て欲しい』と言うような意味合いであろうと類意した。
もう一度右手を左胸に当てて、笑顔で会釈してから…彼ら2人の左側に付いて並ぶ……ふたりとも笑顔で何度も頷きながら、そのまま並んで歩き始めた。
まだまだ言葉の意味は解らないが、発音も含めてデータは蓄積されているから、いずれ解るようになるだろう。
3人で路地から大通りへと戻り、10ミニット程歩いて6人が並んでいる列の後ろに着く……どうやら、何らかの交通機関に於ける停留所のようだ。
6ミニット程待って…1台目の『馬車』のような物が来て、6人を乗せて行った……更に5ミニット待って2台目が来る。
車を曳いているのは、四足歩行の爬虫類だ……私が居た銀河世界でも辺境の惑星では、このぐらいのサイズの哺乳類動物に、このような役を当てがっている所もある。
男性が御者に行き先を確認したようで、女性と私にも乗るように促す。
取り敢えず乗り込んで座ったが、走り出してみると…これが意外に乗り心地は良くて感心する。
ただ…元の世界に居た時に、記録資料でしか観た事のなかった『葉巻』を…男性が咥えて火を点け、煙を蒸し始めた時には…さすがに乗らなければ良かったと思った…これ程の強烈な臭さは初体験だった。
幸いだった事に、忍耐の時間は15ミニットほどで終わった……目的地近くの停留所に着いたので、私達は『馬車』から降りた。
降りて直ぐ、女性が私の左腕に右手で触れて…左手の人差し指で前方を指し示した…その先には、この地域では一般的らしい戸建ての住宅が観える。
どうやら、このふたりが住んでいる家らしい……自宅に招待しようとしてくれているのだろうか?
同行すると、やはりそうだった。
近付いて門扉を開けて、敷地に入る。
玄関の前に立つと、男性が鍵らしい物を出し…ドアを解錠して開いた。
ふたりが開かれたドアから住宅の中に入り、女性が私を手招いた。
頭を下げて、私も玄関を潜って中に入った。
靴を脱いで、上がるタイプの住宅だ。
靴紐を解いて足から抜き、招かれるままに上がらせて貰った。
居間らしい部屋に招き入れられて見ると…そこに初めから座っていたらしい男性の姿に、私は驚きを感じた。
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