森のソロキャンプと運命のもふもふ 14

 それから丸二日。

 コロと水汲みに行ったり、森苺を摘んで即席ジャムを作ってみたりと、相変わらずのんびりスローライフを満喫中。

 神様からの返信は、まだこない。


 既読スルーか? あの野郎、まさか私のことブロックしてないだろうな……。


 それともあれか? 神様の感覚の「返事は遅いかも」ってのは、1か月単位とか1年単位?


 そんな不安が頭をよぎり始めた、三日目の朝。


 ついに私は決意する。


「コロ! 今日は、お引越しだ!」


『お引越し?』


「そう! もっと広くて、もっと美味しいものがいっぱいある、夢の国へ!」


『やったー! お引越し! 冒険だ!』


 うん、純粋でよろしい。そのキラキラした瞳に、私の腹黒い欲望が少しだけ浄化されるようだ……。


 まずは腹ごしらえ。メニューはコンビーフ丼だ。フライパンで軽く炒めたコンビーフの香ばしい匂いが、朝の森に広がる。コロも目を輝かせ、あっという間に平らげる。


 さて、いよいよ出発だ。

 まずは、この数日間お世話になったマイホーム(テント)の撤収から。


「《収納》!」


 念じると、テーブルや椅子が面白いように吸い込まれていく。いやー、四次元バッグ様様だ。


「《洗浄》、《乾燥》!」


 テントに魔法をかけると、土汚れや夜露が一瞬で消え、新品同様の輝きを取り戻す。


「《撤収》!」


 とどめの一言。すると、テントがまるで生きているかのように、ひとりでに畳まれ始めた。ペグが抜け、ポールが縮み、見事に元の収納袋にすっぽり。


「我ながら、無駄のない動き」


 ものの数分で、キャンプサイトは跡形もなくなった。立つ鳥跡を濁さず、だ。


「よし、コロ、行こうか!」


『うん! レッツゴー!』


 コロが元気いっぱいに駆け出す。私の頼れるナビゲーターだな!

 しかし、道なき道を進むのは、やはり甘くない。木の根っこトラップに行く手を阻まれ、背丈ほどもある下草の壁に阻まれ……。


「もうっ、鬱陶しいわ!」


 堪忍袋の緒が切れた私は、チート能力の解放を決意!


「《整地》!」


 目の前のデコボコ道が、あら不思議! まるでプロが施工したかのように、なだらかな平地へと変わっていく。


「《伐採》!」


 うん、もちろん、エコには配慮するよ。あくまで道を塞ぐ小枝やツタを払う程度の、優しい伐採。それでも効果は絶大。

 進む先には、幅1メートルほどの快適なハイキングコースがみるみるうちに出来上がっていく。


「私の生活魔法、完全に土木作業用スキルになってる……。なんか違う気もするけど、便利だからいっか!」


 ぶつぶつ言ってる私に、コロが嬉しそうに駆け寄ってくる。


『コトリ、すごい! 』


「まあね。これくらい、私にかかればお茶の子さいさいだよ」


 コロに褒められて、私のやる気ゲージは一気に満タンになる!

 そうだ、これは土木作業ではない! 愛するペットとの旅路を快適にするための、高度な環境整備なのだ! そうに違いない!


 そんなこんなで、魔法で道を舗装し、疲れたらおやつ休憩を挟み、コロともふもふしながら、私たちは森を進んでいく。

 子供の足では進む距離も限られる。その日の夜も、森の中でテントを張って眠った。


 そして、旅立ちから三日目の昼過ぎ。

 木々の隙間から、これまでとは明らかに違う、強い光が差し込んでいることに気づいた。


『コトリ、あっち、明るいよ!』


「うん、行ってみよう!」


 光の方へ駆け寄ると、視界がぱっと開けた。

 やっと森を、抜けた!

 目の前には、綺麗に踏み固められた、幅の広い土の道がどこまでも続いている。


「街道……!」


 道の先には、荷馬車を引く商人や、腰に剣を下げた冒険者らしき人々の姿。

 初めて見る、異世界の人々!

 そして、その道の遥か先には、巨大な城壁に囲まれた街のシルエットが見える。


「あれが……ハルモニア!」


 地図で見た、黒い点。私たちの最初の目的地。

 ついに、我が軍は文明社会にたどり着いたのだ!

 文明レベルは期待してないけどな!

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