後書き
何処もかしこも、喧騒と修羅に溢れるこの世界である。現実でも、ネットでも。其れは私達が人間であるからこそ起きる問題なのかも知れない。でもだからこそ、何も考えたくない。
半年前から本国で実装され、気になっていたネトゲのキャラが、漸く実装された。嬉しさの余り、まだ期間はあるのにその場で引いてしまった。後悔はない。一切ない。
そうしてヒラヒラした子を見ていると、ふと、本家大元の題材になった子を見たくなった。
全国各地に水族館は数あれど、金魚に対してそこまで力を注いでいる水族館は少ないのではなかろうかと思う。その水族館の最も金魚見やすいベンチに腰掛けて、ただ揺らめく様を眺める。
BGMの穏やかな流れの中に凛とした鈴の音が聞こえると、祭りの最中に迷い込んだ気持ちになる。水族館の良さというのは、やはりそういう環境下にあると思う。
水に流されて揺らめく鰭を見ていると、今まであった悩み事や、争い事を少しでも忘れさせてくれる様に思えた。
「鰭の長い魚が好きで。オスのベタとか。金魚とか。触手だけどクラゲも好き」
そうそう。ヒラヒラしたものが好きなのだ。何処か優雅で、せかせかせず、安らかな気持ちになるから。水に流されているのを見ると、レースの様だから。
しかし綺麗なものばかりに目を取られていると、ふと一匹だけ、鈍色のまだら模様の金魚を見つけた。真っ二つに割れた尾鰭は、他の金魚と違って短く、水に当てられても固く、揺らめくことをしなかった。
「あー硬いね。あの子」
私はそう言って、水中の上を揺蕩う、鈍色の金魚を指さした。其れに気付いた瑠衣は同じように水槽を眺め、ただぼんやりと呟いた。
「金魚の祖先は鮒だ。だから元々野生にいない。が、人口で飼われている金魚は時折、鮒に戻る事があるらしい」
「なんで?」
「雑な飼い方をするとそうなるらしい。ストレスや遺伝によって、赤みが失われ、鰭が短くなる」
そう考えると、金魚も人間も大して変わらないのかも知れない。苛酷な環境、争いの図中、そんな中にいたら誰だって醜くなる。
金魚は何も考えてないのかと思ってた。ただ人によって手を加えられ、悠然と泳いで楽しませる為の存在なのかと思っていた。けれどもきっとそれだけじゃないのだろう。
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