憧れの人の、絵のモデルになる。
憧れの人の手によって、僕はカンバスに閉じ込められるのだ。
何もないカンバスの中に、
安らぎも悲しみも不安も全てがあった。
好きな画家に、フランシス・ベーコンがいる。
ゴッホとは違い、生きているうちに富も名声も勝ち取った人物である。
彼はアトリエに侵入した泥棒と恋に落ち、彼をモデルにしながら生活を共にしていた。
……実話である。
好きな人を描く時間。
それはどういう心境なのだろうか……は、当人にしかわからないいところではあるが、
本作を読む前に、一度フランシスベーコンの書いた絵を見てほしいと思った。
ずっと疑問だったのだ。彼はどういう気持ちで「これ」を描いたのだろう? と。
登場人物とフランシスベーコンを重ね合わせたのは私の勝手な解釈だが、
画家とモデルという関係。それを覗き見ることのできる純文学だと思う。
一緒にいることが、求め合うことが、幸せなことばかりとは限らない。
ご一読を。