作者が作品の舞台としている神津山市は一種のシェアワールド的な広がりを見せている。
このお話はラヴクラフトの『闇にささやくもの』の後日談的オマージュとして語られており、近況ノートには悍ましいイラストが掲載され、想像力をたくましくさせる。
民俗学の教授の元に一人の学生が、身内の相談にくる。母が新興宗教にハマったから助けてほしいと。懇意にしている家柄だから、教授は調査に乗り出すが……。
序盤からネクロノミコンやミスかトニック大学、という暗黒神話を知っているならお馴染みのワードが出てくる。神話ファンはそれだけでも嬉しいが、作者独特の地理感覚が神津山を実在するかの如きリアリティを持たせていることで、日本のホラーという文脈から外れておらず、怪異も直接的には名言されていない。それでも読む人間からすれば、なるほどねと分かる。
個人的にはクトゥルー神話を知らずとも短編連載として楽しめるが、神津山シリーズを知っていればもっと楽しめるだろうとは思う。
あと一つ勿体ないのは、作品のタグ付けに「ユゴス」とあること。読む前からユゴスが出てくるのねと分かってしまうのは期待感もありつつ、やはりかという予定調和にたどり着いてしまうので。
大学教授たちのコンビで別の作品を読んでみたい、そう思わせる作品でした。
和製クトゥルフと言えばこの作者を抜きには
決して語れない…。
何故なら、この日本に太古の邪神たちとその
辺縁のモノ、更にはその信者が跳梁跋扈する
『神津山市』という半架空の地方都市を
何ら違和感なく確立しているからだ。この
現実感がまさに 日本のアーカム を彷彿と
させ、又相反する文化の流れをも鮮やかな
臨場感を以て読者の目の前に展開する。
この【闇にいざなう異邦人】とは、勿論
和製クトゥルフ都市『神津山市』に展開する
H.Pラヴクラフトの 闇にささやくもの の
後日談的オマージュ作品と『近況ノート』で
述べられている。
そう、この『近況ノート』に解説がされて
いるところも併せて楽しめるだろう。
と或る大学の構内で、一人の教授が生徒より
自分の母親が得体の知れない宗教に嵌り
困っているのだという相談を受ける事から
話は始まる。
ご近所付き合いをしている家庭の事とも
あって、彼は相談に乗る事になるのだが…。
そこからの怒涛の様な展開には常に不安と
臨場感とが付き纏う。
神津山(茨城県w)の地理とも相まって
どんどん不穏な世界へといざなわれる。
何が凄いかというと、このクトゥルフの
持つ厳粛で荘厳な旧きモノたちの世界を
現代の、しかも日本の 怪談 にまで全く
違和感なく落とし込めているところだろう。
難しく考えずに楽しめる、この作品。
クトゥルフを知らなくても大丈夫。そして
大いなる闇の物語の数々を知る者たちには
きっと、驚愕と感嘆を齎すだろう。