第8話 外出しました

いつも通り日が昇る頃までユーリに体を預けていた。

入浴を済ませ、ベットで眠るユーリを確認し捨てられたネックレスを取る。

朝日が魔法石を照らす。

黒くなった魔法石は輝くことはなかった。全てを使い果たし何も残っていない。


「……オレと会う前から持っていたよな」


ふと、初めて幼い頃に会ったユーリを思い出す。彼はこのネックレスをしていた。

オレはネックレスを持ってある場所へ向かうことにした。

夜の門の見回りをしている団員に声を掛け、外出すること、遅くなることを伝えた。1人で塀の外へ行くことを渋られたが夜には帰る、と伝え出ることができた。

オレは馬を走らせた。

太陽が高くなるに連れてオレは、そろそろ目を覚ますユーリのことを思う。

きっとオレの部屋で起きたユーリはパニックになっているかもしれない。

置き手紙なんて書いてやらなかった。

困ればいいと思った。



暫く馬を走らせ太陽が真上に上がった頃、小さな村に着いた。

ユーリの故郷だ。魔力の濃度が低いのか、何か施してあるのか。塀の外なのに穏やかな時間が流れている。

街とは違い、小さな家が点在していた。

美しい花が色んな場所で咲き誇っていた。

クリーム色のレンガ作りの家の扉を叩く。

中から声がして出てきたのはやや老けた女性だった。

すみれ色の髪をしていた。


「ユーリ・アッシュフォードさんのお母様ですか?」


「アルト様じゃないですか」


家の中に招かれ、中に入るとキラキラとした魔法石が沢山置かれていた。


「趣味なんですか?」


「もう亡くなってしまったんですけどね、私の母が結構すごい付与師でね」


ゆっくりとした手つきで紅茶を出してくれる。ハーブのいい香りがした。


「色々試すって言って、こんなに集めちゃったんです。中身のない子しかもうここにはいません。ただの綺麗な石ですね」


「……そうですか」


オレはポケットからネックレスを出す。


「ユーリが付けていたものなんですが」


真っ黒になった魔法石に錆び付いたチェーンは異様なはずなのに、そこらへんにいる魔法石と変わらない雰囲気を出していた。


「あの子、全部使っちゃったのね」


「使っちゃったって何をです?」


「願いごとよ。確かこれ母の最高傑作なのよ。なんでも願いを10個叶えてくれるって。大きい対価は同等の対価を支払わなければならないらしいけどね」


私も欲しかったわー、と黒くなった魔法石をユーリの母親はつつく。


「なんでもこの石は特別な魔法石だったらしくて……ってアルト様がなんでこれを?」


「珍しい魔法石でこんなにも黒くなってしまっていたので気になって、お祖母様に色々聞きたかったですね。残念です」


本当に残念だ。

ただ分かったのは10回の願いをユーリが何かを願い、使い果たしたことくらいだ。


「そうだわ、母の魔法石の記録に何か書いてあるかもだわ。読みます?」


「いいんですか?」


「ユーリがお世話になっていますもの。えーと、ああ、これよ」


魔法石が置かれている後ろの本棚から分厚い本を出し、オレに渡して来た。

文字の羅列を読むのが苦手だ。ましてやこんな分厚い記録の本だと目眩がしそうだ。

ペラペラとページを捲っていく。


目頭を抑え、休憩すると窓の外は少し暗くなって来ていた。


「しまった」


オレは読む速度を早めた。

どこにもそれらしいことが書いていない。最後のページまで来たが何も書かれていなかった。

しかし、よく見ると最後のページと本の隙間にもう1枚、ページがある。

破らないようにそっと取り外していくとユーリのことが書かれていた。



5際になったばかりのユーリが魔物から呪いを受けてしまった。

ここら辺ではでない珍しい魔物だった。

その魔物は大層強かったけれど、騎士団によって倒され、私は安心した。

けれど、ユーリの呪いは消えなかった。

何の呪いか分からないけれど、良くないものだと分かるわ。

ユーリには幸せになってもらいたい。

魔法石には10回の願い事を出来るよに全て注ぎ込んだ。大きな願いにはそれ相当の対価が必要になるようにしたわ。

私はこれを作ったことでもうすぐ死んでしまうだろう。

ユーリ、幸せになりなさい。




やはり、オレの記憶がおかしいことになっているのもその願いの代償としてユーリが何かをしたからだ。


「すみません、こちらありがとうございます」


「何か……分かりました?」


「ええ、お祖母様は孫思いの方だったんですね」


自分の命をかけてしまうくらい。


「では、これで。オレは帰ります」


「もう外は暗いですよ?魔物が出るかも。泊まられていっては?」


「すみません。団員達が心配するかもしれないので」


オレはユーリのネックレスをポケットにしまう。

外に出ると完全に夜だった。このまま馬を走らせれば明け方には着くかもしれない。

夜には帰ると言った手前、団員達が朝には捜索隊を出してしまうかもしれない。

バルトには帰ったら絶対に怒られるだろう。もちろん、アレンからも。ユーリは泣いてしまうかもしれない。


「アルト様、これ」


ユーリの母親から軽食を渡される。


「ありがとうございます。帰りながら頂きますね」


「アルト様、ユーリは無事なんですか?」


「ええ、無事ですよ。何か心配事でも?」


「普通、10回の願い事を対価を支払ってまで全て使いますか?……何を支払ったのか分からないですが、ユーリが心配で」


それもそうだ。

程度にもよるが10回の願い事を対価を支払ってまで使い果たすことは早々ない。オレだったら慎重に使う。


「あの…………ユーリのこと、お願いします」


「もちろんです」


オレは馬に乗り、村を出た。

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