漢字の部首に思いを馳せて読んでみてください。
承認欲求、葛藤、謙虚さ、哀愁……様々な情感が豊かに、そして繊細に描かれていることが読み取れると思います。
「てへん」の「扌」と「にんべん」の「亻」との言い争いから始まる本作。
途中、二者の論争をわきで傍観し、水に流すような第三者「さんずい」の「氵」や、自身の立ち位置を憂うように哀愁感を漂わせる「おつにょう」の「乚」の存在感。「したごころ」の「⺗」は名前負けしそうな可哀想な部首であるがゆえ、どこか放っておけない愛着さえ感じます。
決してメジャーではない部首も含まれますが、それらなしでは漢字の世界は成り立ちません。必要不可欠な存在として見過ごせない、そんな細やかな配慮として作者愛が行き届いていて、作品を思いやる丁寧な深みを与えている点でとても好感が持てます。
時代が進むにつれ、漢和辞典からは遠ざかり、文字そのものを書く機会さえ奪われつつある昨今。
今一度古き良き時代に立ち戻り、ペンを握る手で漢字を書きながら思いを馳せたい。
ユニークなキミたちは本当に尊い存在なんだと。
これからは漢字を書く感覚が変わるかもしれませんね。
心慕うように温かい漢字を綴り愛でるまでは。
部首というのは、非常に便利な「漢字のパーツ」です。
何せ、それが漢字の構成パーツに含まれているだけで、その漢字がどういう意味合いを持つ文字なのかのカテゴライズが瞬時にできてしまうからです。
実に合理的で完成された言語の機能と言えるでしょう。
ちなみに、警察や犯罪などの分野でも、部首という存在は大活躍しています。
部首単体を切り取って、犯罪のカテゴリを示す隠語としての役割があるわけですね。
詐欺なら「ゴンベン」、偽造なら「ニンベン」、汚職なら「サンズイ」、窃盗なら「うかんむり」といった具合ですね(ちなみに「窃」の部首は「あなかんむり」だったりします)。
そんな日本語にとってはなくてはならない存在である部首ですが、部首界の一大勢力、左側に添える「偏」部門の二大スターである人偏と手偏がなにやら争っているようです。
もう既に不毛でくっだらねぇ予感しかしないですね。
ついつい「勝手にやってろ!」、「もう結果だけ教えろ!」とクソ映画のキャッチコピーみたいな茶々を入れたくなりますが、ここはぐっとこらえて互いの言い分を……。
うん、何か聞いて損した。
しかし、そんな泥沼じみた不毛な争いを解決したのは、なんとも意外な第三者の介入でした。
そしてそれが何とも乙なんですよね。
筆者の知見の高さが見事に光ります。
ここはひとつ、お馬鹿な争いと笑わずじっくり話を聞いてみようではありませんか。
そして、軽く笑って水に流して差し上げましょう。
漢字を積極的に学ぶ小学生ぐらいのお子さんや、日本語習得に苦心する外国語圏の方なんかには、特に刺さりそうな作品でした。
是非、漢字辞典を片手にお楽しみください。