転生3回目の女、みんなを助ける

 まだ眠っている綺羅乃ちゃんを旅館の玄関まで運び出す。

 俺は山の方向へ歩みを進める。あの2人を見つけ出すために。


『一度落ち着け、そうじゃなきゃ索敵はしないぞ』

『なんでだよ!綺羅乃ちゃんが毒で死にかけたんだぞ!ここでモタモタしてたら皆が危ないだろ』

『そうだね。でもね、ここで焦って行動してキミまで危なくなったら、あの人間三人はどうする?守れなくなるだろう?冷静になって考えるんだ』

『……確かに…ごめん』


 そうだ、綺羅乃ちゃんは治療してもう大丈夫なんだよな。今焦る理由はないね。


『よし、杖ちゃん。まずはこの辺りの人々を避難させよう。その後にぶっ倒そう』

『うん、そうしよう。必ずぶっ殺そうか。忘れていたが、私が張った罠の意味がなくなってしまった』




「綺羅乃遅いな」

「そうですね〜…道に迷ったのかもしれません〜」

「にしてもだろ?大体、アイツは索敵系の異能を持ってるから、迷うことはないはずだ」


 綺羅乃は探知の異能を保持している。

 そのため、百合や歩唯の気配を感知し自身のいた場所などは容易に知ることができる。

 が、未だ帰ってきていないのが現状である。


「ちょっと探してくる。あいつなら、外の自販機を見てそうだから外行ってくる。すぐ帰えるよ」

「…わかりました〜。無事に、ですよ?」


 歩唯はその問いに対し何も応えずに部屋を出て玄関に向かう。


 草木が生い茂っている外は不思議と静かで虫の鳴く音やカラスの鳴き声が聞こえない。

 それが精神的な物なのか、実際に何もいないのか分からなかった。


 玄関に着く。

 ガラス戸を通して外を見る。外壁には、寄りかかるようにして倒れている綺羅乃の姿があった。


「大丈夫か?!綺羅乃!」

「――んん…あれ?なんで私こんな所で」

「…何かあったのか?」

「確か…森の中に人が居て、読んでたら急に身体に力が入らなくなって……後は覚えてない」

「そうか…とりあえず、アタシ達の部屋に戻ろう」


 その刹那、この場所の空気が変わる。同時に気持ちの悪い圧迫感も感じられる。

 背後を振り向く。思考したものではなく、直感的なもので。


 後方50m程に、野生動物の群れがいた。

 だがそのどれもが身体から黒っぽい瘴気を放っている。


「あれは…なんなんだ?」


 その中でも一際に大きいなにかがいた。

 野犬、鹿、猪、熊などの生物や小動物の手足や頭を引っ付け癒着させたような見た目。とても動物とは言い難い姿形をしている。


 それらが此方を見ている。いや、睨んでいるようにも見える。


「と、とりあえず、旅館の中に避難でもしよう。綺羅乃、立てるか?」

「立てるよ……ねね。なんかさ、あの変な動物達近づいてきてない?」

「確かに近づいてきてるな…急いで入ろう」


「ふぅ、大丈夫かな。部屋に戻るぞ」

「おっけい」





 近隣住民の半数の避難が完了した頃。

 旅館近辺は謎の獣達により魔境とかしていた。


『え、ここらへんやばくない?』

『改造幻獣だね。あれは魂を染めて、ただの生物を昇華させているんだ。まぁ、昇華と言っても良い方悪い方で両方あるけれど』

『ほえー…あれはやっぱり悪い方だよね?身体から真っ黒な瘴気みたいなの出てるし』

『そうだね。どうやら特殊な毒で、身体という器と魂を汚染している。あれに噛まれると感染する形で他の生物も汚染される』


 どっひゃー…怖すぎるねぇ…。

 あれに近づいて殺さないといけないなんて嫌だよ。


『そう言ってもね、身体能力の底上げや身体の頑強さの強化がされる。大技を使ってもいいが、一般人まで巻き込んでしまう可能性があるんだ。だからこそ直接殴るしかない』

『どうにか殺さない方法とかないの?』

『あるけど大変だ。殺したほうが数倍楽だよ』


 そうだけどさぁ…俺も噛まれてあんなになるのは嫌だし怖いから無理だよ。

 だからその殺さない方法ってやつを教えてよぉ。


『私がいるから大丈夫だが…まぁいいよ。やり方は簡単だ。毒を取り除いてから、歪んでいる器と魂の形を整形する。それだけだ』

『それ近づかなきゃダメじゃない?』

『大丈夫だよ。空に浮いてちょっとイジればいいよ』


 ならいっか!

 今思ったんだけどさ…もしかして、一匹ずつやらなきゃいけないんじゃない?


『そんなことはないよ。一箇所に集めて一斉にやればすぐに終わる』


 そうなんだ。それなら楽ちんだね。

 じゃあ早速やりますか!




 朝までは快晴であった空は、いつの間にか白く霞んでいる。

 それは、あの男達が散布した毒ガスが大気まで広がり陽光を防いでいるからだ。


 そんな空の上、琴音は地上を見下ろしていた。

 その手には強烈な光が鎮座しており、妙に興味を引く配色をしている。


「散れ」


 琴音のひと言で無数の光に分散し、汚染された動物達の前に移動する。

 それに寄せられた動物が学校のグラウンドやこの街一番の大きさの公園にゾロゾロと移動している。


 琴音は、生態系の崩壊を多少なりとも防ぐため、捕食者と被食者を区分し他の所に移動をさせていた。


「解毒」


 治癒の異能で器と魂の毒による汚染の解除。

 その他に生物の本能を再獲得、瘴気の消失がなされた。


「再設計」


 魂特化である再設計の異能。

 能力の一つである整形を使用し魂を直し、副次的な効果で器の形も直す。


 これにより汚染を受けた全ての動物が元の生態に戻った。






「琴音ちゃんが心配!」

「そうだな、朝からずっと居ないし」

「綺羅乃も元気が戻ったみたいですし〜…琴音ちゃん探し、始めますか〜」

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