調律師と硝煙

神木わるふ

第1話 調律師と弱点

「山本、これから2年間、拳銃チャカを使うな」


薄暗いアパートの一室

そう言いながら男、ボスは拳銃チャカを分解する。

彼の眺める先には、一人の若い男がいた。

その若い男、山本は裏社会でこう呼ばれている。


『調律師』


調律師のいた現場には一つも痕跡が残っていることはなかった。

そんな仕事ぶりから、人々は彼を『調律師』と呼び、裏社会で恐れられるようになった。


調律師殺し屋から調律槌拳銃を取り上げるのか…」


「お前は弾を使いすぎだ。例え依頼をいくら完璧に終わらせてもだ」


机に置かれた拳銃の横には残り10発程度の弾が散らばっている。


「ターゲット3人、相手はナイフだけなのに8発も使いやがって…」


ボスの愚痴を聞いた山本は苦い顔を浮かべながら言う。


「足に一発から二発、それで動きを止めてその次にとどめを刺す。長年教わってきた癖だ。

そんな癖を今さら変えることなんてできない。」


彼は小さな頃殺し屋として組織に連れて行かれて受けた訓練で2発で終わらせると言われてきた。その際の癖で今も1人の相手に3発ほど弾を使う。


「一発で終わらせればいいじゃないか。なぜできない?」


「動いてる奴を一発で終わらせるのは苦手だ。」


「……そうか、じゃあ格闘を使え。お前の能力なら武器がナイフだけの相手なら余裕だろう?」


「苦手だ。理由なんて言いたくもない」


そう言い放ち、山本は机の分解された銃を取ろうとする。

ボスはその手を払い、話を続ける


「理由はわかる。お前が小さい頃に受けた訓練の影響だろう?」


ボスの言う小さい頃に受けた訓練、それは誘拐などに巻き込まれかけた際に対応するための技術だ。

その訓練の影響で彼は肌の感覚が常人の域を遥かに超えている。

その影響で人に触られると本能的な恐怖を感じてしまうらしい。

完璧な殺し屋『調律師』の唯一の弱点だ。


「……拳銃を使うのはダメなのか?」


山本の質問にボスが数秒間考えたあと、口を開く


「わかった。お前には今2つの選択肢がある

一つ目

2日以内に弾数の制限はなしに2つの依頼を終わらせろ。だがこの依頼を2日以内に無事終わらせたら殺し屋から降りろ。

二つ目

今ある残りの12発で3日以内に2つの依頼を終わらせろ。

だが、その中の一つの依頼は確実に近接戦闘になるだろう。。


…そして、二つ目の選択肢なら依頼を終わらせても殺し屋を続けられる。」


一つの選択肢は簡単だが殺し屋から辞めなければならない。

二つ目の選択肢は格闘という弱点をしなければならないが、彼の生活を続ける事ができる。


「俺は別に意地悪を言っているわけじゃない。山本が成長するために格闘は必要だと思ったからだ。」


数十秒悩んだ後、山本は口を開く。


「二つ目にする。そっちじゃないと俺は生活を続けられない。」


「ほぅ。…わかった。じゃあ1つ目の依頼だ。」


そう言いながらボスは依頼の内容が書かれた紙を開いた。

彼のこれからの生活をかけた依頼の始まりだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る