最終話 このサイトにアクセスできません。

 「これでいい」


 ​端末を置き、俺は暗闇の中で低く笑った。

 かつての自分(きいろい なつ)の「弱さ」と「未練」をこれでもかと煮詰めた、吐き気がするほど完璧な遺書。


 この投稿を、前の作品の「最終話」として更新してやった。


 ​「期間は短いけど」という一文が、読者の脳に毒のように回る。


 これを読んだ連中は、勝手に最悪の想像を膨らませるだろう。


 絶望した作者が、最後に何を遺そうとしているのか。あるいは、もうこの世にいないのではないか。

 ​SNSは、狙い通り阿鼻叫喚の嵐だ。


『嘘でしょ、なつ先生!?』


『誰か連絡取れる人いませんか!?』


『カテエラくらいで自分を責めないで!』


 ​初心者作家どもも、俺の仕掛けた共犯者としての恐怖に踊り狂っている。

 彼らが必死に拡散するほど、この「悲劇」という名のコンテンツは、ネットの深淵へと浸透していく。


 ​「カテエラした自分への同情なんて、一円の価値もない。だが、お前たちのその『恐怖』と『関心』には……莫大な価値がある」


 ​俺は、新しい端末を手に取った。

 これまでの「きいろい なつ」というアカウントは、これで完成された「呪いの遺物」となった。

 明日からは、新しい人格、新しいペンネームで、この騒動を「検証」するモキュメンタリーホラーを世に放つ。

 ​自分が殺した過去の自分を、自分の手で暴き、考察し、さらなる高みへと昇華させる。


 ​「結果こそが全て。……そうだろ?」


 ​鏡に映る俺の顔は、かつてのどの作品よりも、醜く、そして美しい物語を語っていた。

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