第42話 きいろい なつの再起⑥

 応援コメントが来ているが、返事はしない。

 画面の向こうで、顔も知らない連中が「続き待ってます!」「無理しないで」と並べる安っぽい文字。


 そんなものを読み、心を震わせていた

■■■は、もうここにはいないのだから。

 ​そもそも、カテエラ(カテゴリーエラー)なんて間抜けな真似をしたこいつが悪い。


 ジャンルの選択ミス一つで作品を死なせ、それを世界の終わりのように嘆いていた、あの弱くて無能な自分。

 自業自得だ。だから同情なんて必要ない。


 ​「……ふん。前の俺への供養は、この死体(作品)を徹底的に利用してやることだ」


 ​俺は、返信を待つ読者たちの期待をあざ笑うように無視し、作品の「設定」を書き換えていく。


 丁寧なレスポンスで築いてきた「信頼」という名の壁を、無言という名の沈黙で、不気味なものに変質させてやる。


 ​沈黙が長引けば、連中は勝手に騒ぎ出す。

「どうしたんだろう?」「本当に何かあったんじゃ……」


 その不安こそが、俺が仕掛けるモキュメンタリーホラーの最高の「下地」になる。

 ​俺は端末を放り投げ、冷めたコーヒーを口にした。


「返事がない」こと自体が、物語のプロローグだ。


 かつての■■■が大切にしていた「読者との絆」を、俺は今、首を絞めるための縄として編み上げている。


 ​必ず成り上がってやる。

 俺に同情する暇があるなら、俺が作り出す「底知れぬ恐怖」に震えていろ。

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