第3話

「あのねあのね、私はね一人じゃないんだよ?私にはねななちゃんがいるんだよ?」

「ななちゃん?」

アレンさんはこそっとエレナさんに耳打ちした。

「空想上の友達だと思う。なずなは虐待されていたんだろう。だから自分を守るために空想の友達を作って、自分を守ろうとしたんだろう。」

「ななちゃんはくうそうじゃないもん!ちゃんといるもん!ななちゃん!」

『おう、ちゃんといるぜ。初めましてだな、アレンにエレナ。俺はナナと呼ばれてるものだ。ありがとな、なずなを助けてくれて。』

「どういうことだ?口調が急に変わったぞ。」

「俺は、なずなが強い自分を望んで生み出された、ナズナの二重人格だ。」

「「二重人格...」」

『ナズナはな、お前たちが言っていた通り虐待されていたんだ。それで強い自分を望んだんだ。そして俺が生まれた。俺はなずなを守るために存在している。お前たちもなずなを傷つけたら容赦しないからな。』

エレナさんとアレンさんは顔を見合わせてから言った。

「あぁ、約束しよう。もう二度とナズナが悲しむことがないようにすると。」

「えぇ、私も約束するわ。あなたもよろしくね、ななちゃん?」

『あぁ、よろしく。それじゃ、俺は戻るぜ。』

私になった。話が終わったみたいだ。

「わかってくれた?ななちゃん、優しいでしょ?」

「ふふっ、そうね。とっても、優しい子ね。あなたたちはとても仲がいいのね?」

「うん!ななちゃんはね、私がおとうさんにぎゃくたいされてるときにね、殺してくれたんだよ!」

『なずな!それは言っちゃだめだ!』

「「え?」」

「殺した?ななちゃん、なずなちゃんのお父さんを殺してしまったの?」

『・・・そうだ』

「なんでだ?虐待していたとしても父親だぞ?父親を中身が違うとはいえ、その手で殺してしまったんだぞ⁉」

『だから、言わないつもりでいたのに...』

「なぜ、そんなことをしたの?」

エレナさんが悲しい顔をして言った。なんで殺したことにおこっているんだろう?

『なずな、少し眠っていてくれ。これからお前には聞かせられない話をするからな。いつか必ず話すから、今は眠っていてくれ。』

いつもはそんなこと言わないのに...

まぁ、いつか教えてくれるならいいか!

「うん!わかった!」

そう言ってなずなは眠った。

「なんだ、眠るってどういうことだ?」

『そのまんまの意味さ。眠ってもらって、俺たちの話が聞こえないようにしたんだよ。』

「なぜだ?」

『これから話すことは、なずなにとって思い出したくもないことだからだ。』

そして、ななは話し始めた。


2年前

「ねぇ、おとうさん。ごはんは?もうみっかもたべてないよ。おなかすいたよ。」

ガンッ

「うっせぇな、俺に話しかけんじゃねえよ!飯ならどっかでもらってこい‼」

そういわれてなずなは、外へ出た。

ガサゴソ ガサゴソ

「あ、あった。きょうはおにくがある。ごちそうだ。」

なずなはいつもゴミ箱をあさってご飯を食べていた。だから、もちろん食べれない日もあった。そんなときはいつも、家から少し歩いて行ったところにある一軒の家へ行った。そこには、一人のおばあさんがいる。

「おばあちゃん、こんにちは。またもらってもいい?」

「えぇ、いいですよ。またご飯をもらえなかったのね。かわいそうに。」

ご飯がない日は、ここに来るとあたたかいご飯をもらえた。

そこはいつも、とても暖かった。幸せだった。

だが、その幸せは長く続かなかった。

「なずなぁーー!」

「なんだい?こんな夜更けに。誰が叫んでいるんだい?」

ガタガタ ガタガタ

「まさか、君の親かい?」

コクンッ

「そうかい、ずっとね、わたしゃあんたの親に言いたいことが山ほどあったんだよ。」

そう言っておばあさんは外に出た。なずなは窓からその様子を見ていた。

「おまえだね、あの女の子の親は!あんたにはね、言いたいことが山ほどあったんだよ!親だというのになんだお前はっ!」

グサッ

「がはっ!」

「うるせーんだよ。てめーにあれこれ言われる筋合いはねーんだよ。」

なずなは慌てて駆け寄った。

「おばあちゃん!なんで?なんでおばあちゃんさしちゃったの⁉なんでよ⁉」

「あー、うっせ。お前も死ねや。ずっと邪魔だったんだよ。てめえーなんて産ませなきゃよかった。じゃあな。」

そのときなずなの中で、楽しかったこと、うれしかったこと、幸せだったこと、すべてが消え去った。そして、何が善で何が悪なのかも。

―あぁ、つよくなりたい。こんなやつ、けせるくらいに―

『俺が助けてやるよ。俺はナベルナだ。』


『そうやって俺が生まれて、なずなの体を使って包丁を蹴り飛ばした。それで、警察に突き出して捕まえてもらおうと思った。

でも、あいつはもう一本、包丁を持ってた。俺は慌てて、蹴り飛ばした包丁をとって刺したよ。』

「そうか、そのけいさつ?ってのはなんだ?」

『簡単に言えば、罪を犯したやつを捕まえるやつだ。』

「そうか、警備兵のことか!」

「ねぇ、ななちゃん。一つ聞いてもいい?」

『なんだ?』

「あなたは何者なの?生まれたばかりで、名前があるってのはおかしいでしょう?」

『やっぱ気づいたか。これが、俺がなずなに眠ってもらった理由だ。俺は、、、』

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