才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ

第1話

 朝食の席で、赤い髪と琥珀色の瞳を持つ体格のいい父上、ロード・カストールは食事の手を止め、静かに告げた。


「ノエール、他の兄弟の邪魔になる。それは学園に通っても無理だろう、よって才のないお前は今日をもってここを出て、辺境地の別荘に行きなさい」


 この言葉を聞いた僕は、少しも驚かなかった。


 この目立たない茶色の髪、茶色の瞳の僕ノエール・カストールは十五歳になったばかりだが、父上の言葉は僕の予想通り。


 その父の言葉に対して、僕は悲観することはない。むしろ、追放されることは願ったり叶ったりだ。


 たが、ここで「やった! 待っていました!」と喜んでしまうと。何年も僕が剣や魔法に才能がないと出来の悪い息子を演じ、自分の能力を抑えてきたことが無駄になってしまう。それを避けるために、僕は少し落ち込んだ様子で父上に返事をかえした。


「辺境の地? 父上、その話は本当ですか? いまから僕は一人、辺境の別荘に行くのですか?」


「ああ、そうだ。その地でお前は何もせず、本でも読んで、大人しくしておけ」


 父上の冷たい目と態度に、僕は寂しそうに頷く。


「……は、はい、わかりました。父上」


「グ、ハハハ! 才のない奴は早く、この屋敷から出ていけ!」


 大声を上げる父を見つめ、緑色の髪、紫色の瞳の母上は悲しそうに目を濡らしていた。


「何も出来ないノエール、元気でな」


「ノエール兄さんがいなくても、ぼくがいるから安心して」


 母の向かいのテーブルには、二歳年上で父譲りの体躯を持つ兄上が座っている。赤い髪に琥珀色の目。その隣には一つ年下、母譲りの緑の髪と紫色の目をした弟。二人は食事の手を止め、笑いながら、いつものように僕を馬鹿にする。


 たが、これもいつもの光景だ。だけど、これが最後だと思い、僕はその様子を静かに見つめ口を開いた。


「ロード父上、ミーラ母上、ジール兄上、コース弟、今までありがとうございました。朝食が終わったらすぐ屋敷を出て、父上のおっしゃる辺境の地へとむかいます」


「……」

「ノエール……」

「出来損ない!」

「バカ、バーカ!」


 この「ありがとう」という言葉が、どう父上に届いたかはわからない。でも嬉しかったんだ……前世、早くに家族を失った僕にとって、この家族と過ごす時間はとても貴重なもの。


 広い家に一人ではなく、冷たい言葉を言われても、家族の存在は僕にとってありがたい大切な存在。


 ここを出て行くのは少しだけ、寂しい気持ちもあるが、今泣いても父上の決断は覆せないだろう。


 努力、忍耐、才能こそ力になる。


 自分が転生した異世界人だから、いつかはここを出ていくつもりだった。ただそれが早まっただけ。


 書庫で、この世界の知識も頭に叩き込んだ。あまりにもチートすぎて、今までは使えなかった、神様からもらった沢山のチートを使って、のんびりスローライフを送るつもりだ。



⭐︎



 僕は転生者。前世の僕は、何処にでもいる普通のサラリーマンで歳は三十五歳。


 仕事が休みの日、車中泊用に改造した軽バンを運転して、キャンプに出掛けていた。そのキャンプの帰り道、道端に飛び出してきた黒い猫を避けようとして、あっけなく命を落としてしまった。


 ところが驚くべきことに、避けた猫がなんと異世界の神様だったのだ。


 この神様が言うには、自分が最高神様から与えられた世界で、如何やら魔王が復活するらしい。そのため神様は勇者となる者を選ぶため、神書庫にあった歴史書に知らされていた、大昔に勇者召喚をした日本へと来ていた。


 二本は異世界の神様にとって、初めて訪れた地。


 あまりにもの自然の美しさに感動した神様は、勇者召喚の人選を終えた後、黒い猫に姿を変えて散歩をしていたという。そして、咲き誇る桜に目を奪われ道路に飛び出してきたところを、キャンプ帰りの僕が運転する軽バンの前に出てしまった。


『すみません、あまりにも見事な桜だったので……』


 何度も頭を下げて僕に謝ったが、元の世界には戻れないと告げた。


 暇な日に異世界ものの小説、漫画、アニメに親しんでいた僕は神様に後腐れのない地位と、異世界を知る時間、便利なスキルがいくつか欲しいと神様にお願いした。


 こうして僕は、カストール伯爵家の次男として生まれた。伯爵家だが父上は剣に長けていて、騎士団の副団長を務めている。二つ上の兄上はその父上の力を引き継ぎ、剣に長けている。


 そして母上は植物系の魔法を使い、薬師の資格を持っている。弟もまた、母上と同じ植物系魔法を使い、将来は王家専属の薬師になると話す。


 才のある二人の真ん中に生まれた次男の僕には、剣も魔法も人並み以上の才がない。いつも書庫に篭りっぱなしだったからか、カストール伯爵家の穀潰し、お荷物と言われた。

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