ep.12 襲来③
かつて親友が言っていた。この国にレベル5が現れる筈が無い。テレビで専門家が言っていた。邪種が街中に出現する事は無い。もうそんな常識も通用しないのか。
「なんだよあれ…」
楓は無我夢中で走っていた。
いつもとなんら変わらない帰り道。いつもと違ったのは、行く先々に化け物達がいて何故か自分を追ってきているという事だけだ。
ハァ…ハァ…
息が持たない。手足の先が痺れてる。
あの時とは違い、心の準備も覚悟も出来ていない。
犬の形をした黒い奴、猿の形をした黒い奴。森で遭遇した化け物よりは可愛いものだろうが、身近な生物に近いほうが生々しくて悍ましさを覚える。
「ってぇ」
脚が絡まり転倒してしまった。
奴らがすぐそこまで迫ってきている。
「やめ…!」
これから起こりうる未来に目を背けた。
が、一向にそれは起こらない。
「あれ…?」
目を開くと見知った女性の姿が目の前にあった。
「えっと、カリサ…さん?」
「あぁ。カエデ、だったかしら?もう全部倒したわよ」
つまらなそうにカリサは答えた。
疲れも戦った痕跡すらも見られない。
「ありがとうございます?」
「いいの。ふーん。あなた本当に戦えないのね」
「そりゃ、一般的ですから…」
「ちょうどいいわ。今日家に泊めてくれる?」
「はぁ…」
「ありがとう」
「は?」
状況が掴めぬまま着々と話が進んだ。どうやらカリサは財布を落としてしまい、3日前からずっと野宿をしていたようだ。
そのままの流れで一緒に帰宅し、ソファーに腰掛け夕飯が出てくるのを待っている彼女に一つ問いかけた。学校関係者では無さそうなこと、化け物を容易く屠ったこと、若い女性なこと。色々ツッコミたい気持ちを抑えて一言。 あなたは何者ですか?
「ロイヤルって言えば分かるかしら?」
「いいえ」
「オーフィス騎士団。フリーの聖隊みたいなものよ」
「…オーフィスって、人類最強戦力の?」
「まぁ、うちの組織に勝てるのは居ないでしょうね」
どの国家にも属さず、独立した対邪種組織オーフィス騎士団。世界が平和なのは邪種に対抗する為と、この人類最強組織が睨みを効かせているせいだとクラスのオタクが熱く語っていたな。と楓は記憶の中から掘り起こした。
少なくとも10匹近くいた化け物達を、瞬きの一瞬でそれも息も乱すこと無く仕留めていたのだ。彼女が強者なのは疑いようがない。
「ちなみに俺に話して大丈夫なやつ…?」
「誰も信用しないでしょ」
「確かに」
テレビやネット等でもオーフィスについて詳しい情報は殆ど出てこない。余程周到に根回しされているのだろう。
とりあえずは口止めなど荒っぽい事はないと安心し、出来上がった料理を彼女の前に置く。
「美味しそー!」
余程お腹が空いているのか、安物の冷凍食品を前にカリサは目を輝かせていた。
「何故街中に邪種が?」
「知らない。私もこの前襲われたわ」
彼女は行儀悪く食べ物を口いっぱいに頬張りながらぶっきらぼうに答えた。街中に化け物が出現したら、今頃騒ぎになっている筈。なのにニュースにすらなっていない。それに-
(この人いつまでいるんだらう)
そう思いつつも先に食事を食べ終え、使っていない寝室の掃除に向かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます