カクコン短編お題の「手」の要素を、まさか隻腕という手段で拾うとはこの李白の眼をもってしても……と、思いながら読み始めた本作。
しかし、ただ右手がないだけであれば、雑でインスタントなこじつけ設定で終わってしまいます。
そんな風に「手」の要素にちょっと重点を置きながら読んでいき……その結末に収まった時に、ようやくその「手」の意味がとても深い意味となって、胸の内にすとんと、いやズドンと落ちてくるのです。
お、おわわぁーッ! 「手」ってそういう意味でですかァー!
ちくしょう、これは一本取られた、上手い……!
よくある異能ファンタジーの仮面を被っているようで、その実ミステリでもあり恋愛要素もあるという、なかなか欲張りセット詰め合わせな本作、実に満足感があります。
私の読書欲も大変満たされました。
コカトリス。目で見るだけで石化などの呪いを発する存在。
RPGで敵キャラとして出てきたら「状態異常」を出されて厄介な敵。基本的に世の中にとっては「悪いもの」として扱われそうな存在です。
本作においては、主人公のロイが一族のために「コカトリス」と関わらねばならない状況になっていきます。
片腕を失うことになり、不遇な日々を送っていたロイ。婚約破棄までされて未来が見えないような状態にもなっていた。
そんな中で、祖父の残した財産を継承するために「コカトリスに認めてもらう」ことが条件になっているという話が出る。ロイはコカトリスの攻略に失敗した父たちに代わって祖父の住んでいた屋敷へと向かうことになるが……。
コカトリスと向き合おうとする中で、祖父が気にしていた事実が何かが次第に見えてくる。
「コカトリス」とは呪われた力を持つものというのが定番だけれど、もしもコカトリスに意思があったら何を思うか。そして、コカトリスを傍においておけるとなったら人はどんなことを思うか。
RPGではお馴染みだったキャラだったけれど、本作でのコカトリスの扱われ方は今まで見たことのないとても新鮮なものでした。
たしかに、こんな風に悲しい宿命を背負わされることになるかもしれない。知性のない獰猛な怪物ならともかく、人間同様に感情があったならきっと辛い目に遭ったに違いない。
ロイの優しさと、掘り下げられるコカトリスの物語がとてもあたたかく、読後に爽やかな気持ちを味わえる作品でした。