推理はAIに任せてます-霧ヶ峰・照明偽装事件ファイル

@ykinoshita36

第1章:AI、起動しました

午前6時。霧ヶ峰市は、今日も霧に包まれていた。

そして、またしても事件が起きた。


「……コーヒー、あと一口だったのに」


霧島澪は、パトカーの助手席でぼやいた。寝癖は帽子でごまかし、シャツのボタンはひとつずれている。

だが、彼女にはひとつだけ、誰にも真似できない特技があった。


――聞いた言葉を、一言一句、絶対に忘れない。


「現場到着。通報者の証言を記録しますか?」


腕時計型端末から、機械的な声が響く。

AI捜査支援ユニット――通称「AI(アイ)」。霧ヶ峰署に試験導入されたばかりの、最新型エージェントだ。


「……あんた、いつも唐突すぎるのよ」


「唐突とは、文脈に対して不意に挿入される情報のことです。私は適切なタイミングを選んでいます」


「その“適切”がズレてんのよ!」


澪はため息をつきながら、現場の一軒家を見上げた。

玄関は閉ざされ、窓にはうっすらと赤い染みが見える。


「AI、現場映像の解析、お願い」


「了解。推理は私に任せてください。あなたは証言を、正確に記憶してください」


「……はいはい、私は“録音機能付きの人間”ですよーだ」


こうして、記憶力だけが取り柄の刑事と、推理特化のAIの、ちぐはぐな捜査が始まった。

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