たとえ世界が僕を殺しても。――死に戻る朝、僕はまた君に恋をする

春風拓也

プロローグ 染まる

世界が反転するその瞬間まで、僕はまだ、恋の始まりの中にいた。


「——拓海君、来てくれたんだ」

街灯の点滅する、駅裏の公園。結の声は、オープンチャットで聞いていたあの愛らしい声そのもので、僕の胸を静かに満たしていく。

僕の手には、彼女とお揃いのストラップ。

これを手渡して、本当の想いを伝えようとした、その時だった。


——カラン。

乾いた音が響き、結のカバンから連結器の金具が転げ落ちる。

「あ、壊れちゃった……」

それが、すべての終わりを告げる合図だった。

結が拾おうと身を屈めた背後の闇から、正体不明の影が音もなく溢れ出す。


「結、逃げろ!!」

叫びは突然飛び立った、カラスの羽音と鳴き声にかき消された。


無慈悲な刃が結の背を貫き、鮮やかな赤が彼女の制服を無残に染め上げていく。

崩れ落ちる彼女を抱き留めようとした僕の視界も、次の瞬間、激しい衝撃と共に歪んだ。

(……なんで、どうして……)

胸を焼くような熱さと、急速に奪われていく意識。


薄れゆく視界の端、公園の入り口に人影が立っていた。

逆光で顔は見えない。ただ、その足元で青白く、禍々しく脈動する巨大な魔法陣だけが、この凄惨な景色を美しく照らしていた。

『……残念。このルートも、結末は同じね』

耳に残ったのは、鈴を転がすような、冷酷なまでに完璧な少女の声。

パキィィィィン!!

世界が硝子のように粉々に砕け散る音を聞きながら、僕は底のない暗闇へと堕ちていった。

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