――「するんだろ?」
古びた木製の扉、地下室へつづく階段をゆっくりと降りていく、一段、一段、そのたびに増す緊張感、堕ちていく。少しほこりっぽく、しめった匂い。徐々に高まる心臓の音。
ベッドのきしむ音。皺が波打つ寝台の上。きわめつけは甘い果実に見えた毒。甘い香りで惑わせて、中身は空虚。踊らされているのはどちら。
描かれているのは、この世の理から外れた者と神父の「やりとり」のいち場面。
だが、文章に流れている空気感のなんともいえない味わい。
官能的な筆致に彩られ、何層にも重ねられて色の重圧さを増した油絵のよう。
くらくらと眩暈を起こしそうな芳醇な闇の世界が、圧倒的な描写力が増幅されて零れ落ちる。
だからこそ、痛烈に感じるのは「病のような感情」。登場人物の両者ともが、手にしているはずなのに、手に入れられない苦味をずっと味わい続けている。
行為の虚しさ、そして、残るもの。望むからこそ、手に入れられない痛みが胸を刺す。
おや?――今宵も"彼"は来たみたいだ。もちろん、欲しいものを味わうために。
気配にそっと耳をそばだてれば――、さて、あなたは古びた木製の扉の向こう側をのぞきこむ準備ができているだろうか?