君を夏のお嬢様にしてあげたい

ここグラ

君を夏のお嬢様にしてあげたい

~太陽視点~


「また……雨みたい」

「そっか……」


 彼女である雨宮未雨あめみや みうの曇った表情を見て、俺の……晴河太陽はれかわ たいようの胸は痛んだ。俺達2人は高校生で、明日の天気予報は雨。もちろん、デートの時にいつも晴れなんて都合のいいことがあり得ないことは分かっているのだが……なぜか彼女と休日にデートに行こうとすると決まって雨が降るのである。


「また着れないんだ……白いワンピースに麦わら帽子」

「夢だって言っていたもんな。夏にそれ着て、青空の下で恋人と一緒にお花畑を一緒に歩きたいって」

「うん……子供みたいだよね」

「そんなことないぞ、夢見る少女は可愛いし、俺だってそれ着た未雨を見たいから」

「ありがとう、太陽君。でも、私って雨女だから……『未雨ちゃんと一緒にいると雨降るから、来ないで』とか言われたこと、一度や二度じゃないし」

「そんな酷い奴らいんのかよ……俺がいたらぶん殴ってやるのに」


 そんな本人にはどうしようもないことでイジメるとか、あり得ねえ。だから未雨は少し引っ込み思案な性格になってしまったんだろうか……恋人同士になってから、少しずつ積極的になってはきているが。


「仕方がないよ、名前からして雨が2回も入ってるし。私、度胸ないし」

「そんなこと……あ、植物園とかどうだ? 屋根設置しているところもあるだろ」

「それは私も考えたんだけど……やっぱり、本物のお花畑を歩きたいなって」

「そうか……」

「ごめんなさい……雨女な上に、ワガママまで言って」


 未雨が謝る必要はない、誰だって譲れない夢っていうのはある。普段からあまり自分を主張せず、相手のことばかり考えている未雨なだけに、ワガママ言ってくれてむしろ嬉しいくらいだ。


「気にするな。しかし、どうすれば……待てよ、それならば」

「どうしたの、太陽君?」

「いや、でもそれだと……とはいえ他に思いつかないし」

「ねえ、太陽君ったら!!」

「あ、ごめん未雨、考え事してて。ちょっと来週の週末まで待ってくれないか? 何とかするからさ」

「う、うん……」


 未雨はキョトンとした表情を浮かべている。本当なら、名前に晴とか太陽とか入ってる俺が何とかしてやりたいが、俺は晴男じゃない……やむを得ないか。


***


~未雨視点~


 あれから太陽君が考え事をしていたり、コソコソメールみたいのを送っているのを見かけるようになった気がする。今も昼休みに私に何も言わずにどこかに出かけていったから、思わず後をつけちゃってるけど……うう、私って嫌な女だなあ。


「悪い、待たせた。ごめんな、こんなところで」

「仕方がないわよ。雨宮さん同じクラスだから、教室で話すわけにはいかないし」

「え……どうして雪原さんが太陽君と!!??」


 雪原美曇ゆきはら みくもさん……クラスメイトで、雪原グループのご令嬢だ。美人でお淑やかで優しくて、頭もよくて……天は何物も与えるんだなあって思う。どうして……太陽君と仲、良かったっけ?


「計画は順調よ。確認のために今日、私の家に来てほしいの」

「ああ、分かった」

「!!??」


 家……年頃の男女が相手の家に行くなんて、理由は一つしか。だよね……私みたいな可愛げのない雨女より、すべて揃ってる雪原さんの方が良いに決まってるよね。太陽君みたいな魅力的な男の子に……私が釣り合うわけないじゃない。


***


 数日後の週末、太陽君から連絡があって指定の場所に来てほしいとのことだった。白いワンピースと麦わら帽子も必ず持ってきてって言ってたけど……何だろう? 指定の場所、ここだよね……ってええ!!??


「辺り一面……お花畑。私が来たからやっぱり雨が降ってるけど……歩くコースが全部屋根で覆われている!!??」

「びっくりしたか、未雨。実はな、ここ雪原の家の私有地なんだ」

「雪原さんちの……私有地!!??」

「実は先週、晴河君に頼まれたのよ。『雨が降っても、白いワンピースと麦わら帽子を着たまま回れるお花畑はないか』って。あなたの夢も、体質も、聞かされたわ」

「あ……」

「だから、お父さんに頼んでお花畑の歩くコースすべてに屋根を設置してもらったの」


 私は空いた口が塞がらなかった。一週間しか……経ってないよね? そんなこと可能なのかな……お金持ちって、やっぱり凄い。


「じゃあ太陽君がこの一週間、コソコソ雪原さんと会っていたり、家に行ったりしていたのは」

「あちゃー、バレてたか、気を付けていたつもりだったんだが」

「どういう屋根をどういう感じで設置するか、話し合ったり現場を見て確認してもらっていたのよ。雨宮さんの好みを熟知しているのは、晴河君だからね」

「ごめんな未雨、話すと『そんなの雪原さんに迷惑かけちゃうから、やめて』って止められそうだったからさ」


 うう……さすが太陽君、私のことをよく理解しているというか。知ってたら絶対に止めただろうなあ。


「でも雪原さん……どうして私のために、ここまでしてくれるの?」

「クラスメイトだし、雨宮さんとは前から友達になりたいって思ってたから。これから私が普段使いも出来るし、お互いにとって良いでしょ?」

「そ、そうなんだ」

「晴河君から話を聞いた時は驚いたけど、あれだけ必死に頼まれちゃね」

「必死に……太陽君が、私のために?」

「ええ。愛されているわね、あなた」


 そっか……太陽君が、私のために。やっぱり太陽君は……太陽君だったんだ。優しくて、頼りがいがあって、カッコよくて。


「ちょっと……羨ましいわね」

「え、何?」

「何でもないわ。それより雨宮さん、早く着替えなさい、夢だったんでしょ?」

「う……うんっ!!」


 私は急いで物陰で白いワンピースに着替えて、麦わら帽子を付けた。ずっと家でしか着れなかったけど……ようやく外で、着れるんだ。


「ど……どうかな?」

「めっちゃ可愛いし、綺麗だ……夏のお嬢様って感じだな」

「あ、ありがとう……本物のお嬢様の雪原さんには勝てないけど」

「比べるモノじゃないでしょ、凄く似合ってるわよ」

「あ……ありがとう」


 それから私は太陽君と一緒に、お花畑を回った。雪原さんの表情が少し寂しそうだったのが、気になったけど……


「未雨、夢……叶ったな」

「そうだね……雪原さんには感謝しないと」

「だな。これからもやりたいことがあったら、言ってくれよ。未雨は……魅力的な女の子なんだからさ」

「うんっ!!」


 私は雨女かもしれないけど……それでも魅力的だって言ってくれる恋人が、友達がいる。そんな優しい人達と、これからも一緒に歩んでいこう。この雨の日の思い出を、私は決して……忘れない。




~あとがき~


 読んで下さって、ありがとうございました。短編は最近コメディーチックな内容が続いていたので、今回は少ししっとりとした内容にしてみましたが、いかがでしたでしょうか?


 カクヨムコン11では他にも、長編ミステリー『冥恐の死神伝説殺人事件~瞬間移動を使い、乙女を狩る怪物~』を書いておりますので、読んで下さると嬉しいです。作品のURLは以下の通りです。


https://kakuyomu.jp/works/822139840483911526


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