曇り 時々雨 他ゾンビ

蠱毒 暦

記録 『入学してばっかな私』

今日の天気予報は晴れのち曇り


(降水確率は…30%だったのになぁ。)


私は雨女だから普段なら絶対、折り畳み傘を持っていくのに、今日は家に置き忘れてしまった


濡れた鞄 濡れた制服 


私のため息と、雨の降る音以外の音が存在しない…まるで、私しかこの世界にいないみたい


タオルで拭っても、肌寒さと湿り気は残る


僅かに体を震わせ…外を眺めるのにも飽きて、今日、写真部での初めての活動で、撮影したカメラの映像を改めて確認することにした


ピッ

夕日に照らされた教室昇。


ピッ

校長先生が手入れしている整った庭園。


ピッ

静寂に満ちた図書室。


ピッ

下らないことで、ふざけ合う男の子達。


ピッ

正門で明日、遊ぶ約束をする女の子達。


ピッ

汗をかきながら、校庭を走る陸上部員。


ピッ

綺麗なフォームでプールで泳ぐ水泳部員。


ピッ

不思議な絵を描く美術部員。


ピッ

剣道場で己を鍛え、切磋琢磨する………


「おお…いい感じに撮れてる。」


「ひゃっ!?」


「あ…やっと気づいた。」


顔を上げると赤い傘をさして、同じ中学校の制服を着た、私より背中の高い黒髪黒目の男の子が私の前に立っていて……!?


「今日、剣道場に来てたよね。あの感じからして、写真部だと思ったんだけど…」


「あ、ぁ…あ…」


(男の子に透けた下着とか…見られちゃった)


私の反応を見て、男の子は目を逸らす。


「ごっ、ごめん…!勝手にカメラの写真を見るつもりはなかったんだ。」


「…あの……見て…」


「重ねて謝るよ!ただ、こんな時間に公園で見覚えのある子が1人雨宿りしてるものだから、心配で…ちょっと待ってて!」


「?」


話を聞かずに傘を置いて男の子が駆け出していってから、数分後…自販機から買ってきたであろう缶飲料を持って、濡れた状態で私の右隣の少し離れた位置に座った


「あー冷たかった。じゃーじゃーん!コンポタ!!寒そうにしてたし、あったまるよ。」


(え…でも。)


「下校中の買い物って、校則で禁じられて…」


「先生にバレなきゃ無問題!これは見物料だから…ね?」


(フランクな人なんだ。)


剣道場では準備運動や声出しから、真面目に取り組んでいたから意外で、私は素直にその好意に甘えることにした


カシュ!!!


「「はぁ…あったまる〜♪」」


「写真、すっごく上手に撮れてたけど…将来はカメラマン…いや、カメラウーマン?」


「んえっ…そんな。私はまだまだで…」


「見ていて全然飽きないし、すっごく生き生きしてたよ。今度の剣道の大会に出る時に来て欲しいくらいだ。来る?」


「え、ええ!?」


「半分、冗談!」そう言って笑い、手を叩く


「でも半分はマジだから。その内、声をかけるよ。ええと…リボンの色的に、今年入ったばかりの新入生だよね?」


「はい。あなたは…?」


「おっとうっかりしてた。自己紹介がまだだったね。僕は阿達あだち てる。剣道部で主将をしてるんだ。」


阿達あだちてる先輩。」


「え?いや、いいよいいよ。先輩呼びとか…堅苦しいのはなしで。」


「じ……じゃあ、阿達あだちくん…ぁ。」


コンポタを一気飲みして、何の脈絡もなく上着を脱ぎ、私の肩に羽織らせてくれた


「まだちょっと濡れてるけど…僕の体温がある分、マシになるかなって。」


(温かい…でも、阿達あだちくんの方が絶対、寒いのに……よし。)


一旦、コンポタを置いて、私は鞄から予備の乾いたタオルを取り出し、阿達あだちくんの肌が触れ合うくらいの距離に座る


「?僕に近寄ったら濡れちゃうよ。ま…まさか……いや、1人で出来」


「大人しくしててね。」


わしゃわしゃわしゃわしゃわしゃわしゃ!!!


「わぁぁっ、わぁぁぁぁ!!!!」


「こらっ、動かないの!」


「ぎゃぁぁぁ—————!!!!」


……数分後。


「ぜぇ、ぜぇ…君。意外と大胆なんだね…」


「君じゃないです…私は」


私が言いかける前に、ベンチで倒れていた阿達あだちくんが起き上がり、満面の笑みを浮かべて、私を見た


「雨が止んでる!」


「!…本当だ。」


公園に来た時よりも空は随分と暗くなり…鞄からスマホが鳴ったのが聞こえて、確認してみると、両親からのメールで埋まっていた


「最初から傘を貸せば良かったんだけど…楽しくてつい話し込んじゃった。こんな遅くまで付き合わせちゃってごめん…途中まで送るよ。」


「ありがとう…でも。」


「…?」


(暗くて少し見えにくいけど…)


「あの虹…撮ってからでもいいですか?」


ピッ


そう言った時…阿達あだちくん、「じゃあ、お近づきの印にツーショットを撮ろう!」って…言ってたんだよね


で、近くで隠れて見てた牧田まきたくんも乱入して結局スリーショットに。深夜まで遊んじゃって、お父さんとお母さんに死ぬ程、怒られたんだっけ


これはそんな、私が初めて阿達あだちくんと牧田まきたくんと会った時の…大切な思い出


「……懐かしい。」


私はコンポタの缶をポイ捨てして、カメラをリュックに入れ、牧田まきたくんの2丁拳銃を取り出し、ベンチを立つ


(あの時よりも、コンポタ…美味しくなかったな)


ツギハギでボロボロな阿達あだちくんの黒色の雨ガッパのフードを被り、雨がザァザァと降り続ける外に出た


「空気…読んでよって言っても無駄だよね。」


「「「「ヴァァァァァア!!!!!!」」」」


「なら…今、楽にしてあげる。」


                【発砲音】



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