鏡の王
茶村 鈴香
鏡の王〜異説“白雪姫”
お妃は悩んでいた
王様を弔う儀式も終え
城には白雪姫とお妃と
料理番と使いの者だけ
白雪姫は父の葬儀中
泣くばかりで何も出来ず
お妃がすべて取り仕切った
白雪姫は勉強が嫌い
ラテン語の時間は
花を摘みに河原へ
法律の時間は
焼き菓子をつまみに台所へ
お妃は隣国から嫁いだけれど
きなくさい噂を聞く
1番上の兄が隣国の王位を継いだと
兄は野心家
お妃と白雪姫しかいないこの国まで
手に入れるのは容易いだろう
「鏡よ鏡、どうしたらいい?」
白雪姫は無邪気にクッキーを齧り
お気に入りの木の下で
でたらめな歌を歌っている
「なんとでも理由をつけて
森の小人のところに
あの子を行かせなさい」
白雪姫は何も知らないまま
森の奥深く 宝石掘りの
小人達の小屋に連れていかれた
7人の小人は毎日の
宝石掘りに疲れ果て
家は荒れ放題 食事は硬いパン
「白雪姫、ここにおいてやるから
掃除と洗濯とメシの支度を」
「やった事ないわ、でもやってみる」
はじめのうちは酷かった
床に落ちているものを外に投げて
「掃除したわ」
洗濯ものをただ川に浸して
「洗濯したわ」
食事は外から摘んできた
酸っぱい葡萄
やいのやいの
小人に言われて4週間
ようやく家事のコツは掴んだ
今ではピカピカの床
シャツにはシミひとつない
パンも焼きたて スープは絶品
「喜んでもらえるって幸せかも」
ある夜
窓を叩く音がした
見ると黒い馬に乗った男
彼が隣国の王となった者
隣の国を視察に来たが
深い森に迷い込んでしまった
「お嬢さん、申し訳ないが
何か食べる物を」
「林檎ならすぐにあるわ」
林檎だけではなく
招き入れてスープを差し出した
「たくさんあるから遠慮なく」
やっと生気が戻った顔で
男は白雪姫を見つめる
雪のように白い肌
黒檀のように黒い髪
血のように赤い唇
「あなたをここに置いて置くのは
何かへの冒涜だ
私は隣国の王
どうぞ一緒に我が城へ」
「残念だけど」と白雪姫
「私 小人さんとここで暮らしたい
毎日のスープを喜んでほしい」
王は平静を装って小屋を去り
森を抜けてお妃のいる城へ
兄の接近に気づいた鏡は
お妃に呼びかける
「鏡よ鏡」
お妃にとって必要なのは何だろう
お妃は決心する
「鏡よ鏡 最後のお願いよ
私に相応しい王になって」
黒い馬に乗った隣国の王が
城を訪れた時
艶やかなお妃は微笑んで迎えた
「お兄様
会ってほしい人がいるの
私は喪に服しているから
まだ結婚は出来ないけど」
そばには堂々たる体躯の男
鏡の王
お妃の兄は食事もそこそこに
形ばかりの祝いを述べ自国へ帰った
こうして
お妃は鏡の王と共に暮らし
白雪姫は小人と楽しく暮らした
毒林檎なんてものはない
悪意の塊を作らなくても
なんとかなるのかもしれない
そう なんとでもなる
魔法の鏡はもうないけれど
鏡の王とお妃も
白雪姫と小人たちも
いつまでもいつまでも幸せに
鏡の王 茶村 鈴香 @perumi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます