【赤手児の怪】 カクコン11お題フェス短編 「手」

白銀比(シルヴァ・レイシオン)

第1夜 夜鷹

「ちょっと…旦那、ここいらで休んでいきなんせ」


「…ああ、※‟夜鷹”か。間に合っておる、他当たられい」


「へん!なんだい、この唐変木!!」


「なんだとぉ!貴様ぁ!!…っと、その啖呵、どうせ※妓夫ぎふが見張っておろうに。そのには乗らんぞ。侠客もんと関わりとうはない。拙者は急ぎの用があってな。またの機会にしてくれ」


「…ちっ」




「…どうだい、実入りはあったかい?」


「からっきしさぁ。まぁでも、こんなもんさ」


「相変わらず、癖が悪いねぇ。処構わず盗っ人稼業は気を付けなよ。ここいらで御用は勘弁だよ」


「あんたはどうだい?」


「この辺はもう、ダメだねぇ。あの風聞ふうぶんが立ってからはもう……」


「なんだい?そりゃ」


「…でるってんだよ」


「なにが?」


「化けだよ。化けて出るって浮説がここいらのどぶ沿いに流れてからって言うもの、小心者は寄ってこなくなっちまったい。てなもんで、恥ずかし気に‟筆おろし”に来るかもが減って、この有様さ」


「なる火床へそねぇ、だからかい。難儀なこって」


「ねぇねぇ、ちょっとその化けもん、成敗しにいきなんせ」


矢場やばなこと、止めりゃ止めりゃ。祟られちまうよ」


「このままじゃ閑古鳥が鳴りっぱなしでさぁ」


「…せめて、わっちらの※情夫ひも、連れて行きなんし」




夜鷹よたか

 江戸時代、宝暦~天明までの間にて盛んだった生業。

 遊郭に入れなかった、もしくは追われた遊女が茣蓙だけを持ち道行く男性に声を掛けてまぐわい、ささやかな金銭を貰う。

 現代でいう所の「立ちんぼ」であり、ただ待ちの姿勢ではなかったことから「夜にまるで鷹のよう獲物を狙う」からきていると言われている。

 大坂では惣嫁そうかという。


妓夫ぎふ情夫ひも

 夜鷹の用心棒としての役割を担う。

 情夫ひもは現代でも女性に食べさせて貰っている男性を挿しているのと同意であり、夜鷹蕎麦という単語、文化すらあった。

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