08.あ、d(-_-)灰落ちちゃった

         .,..

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 アーサー達と合流した後、"医者ドクター"の技能向上の為に十数人の手当てをした。

 大量の怪我人のお陰で職業の熟練度が上がった。

 これで布や食器類を水で洗う手際が良くなった。

 何故そうなるの?


 怪我の具合は流れ弾に当たったり崖に埋もれていた人は大したことはなかった、一方でアーサーとカール、そしてビアンカによって怪我を負わされた人は漏れなく重傷だった。

 特に黒髪パーカーの人は頭が割れ目も飛び出し、鼻口耳からも出血して瀕死状態だった。


「我ながら生きているのが不思議だ」

「手加減したんだぞ」


 アップデートの事前情報で新職業"医者ドクター"が告知されてから色々と予習していたのが功を奏し、拙いながらも重傷者から順番に全員の手当てをしたお陰で、謎の集団改め"国境警邏隊"の人達からの誤解は解けた。

 中でも一番の重傷者だったパーカー男は、包帯だらけの顔で地面にぶつからんばかりに頭を下げて謝意を示した。


「ユウ殿。我々一同感謝してもし切れません」

「いやぁ、優秀な装備と丈夫な身体に恵まれた事を感謝した方が良いと思いますよ」

「何を仰る、あのまま放置すれば私は確実に死んでいたでしょう。正に命の恩人です」

「薬提供した俺にも何か言う事無いのか?」

「慰謝料はアレで手打ちにしてやるよ」

「俺のコレクションをバラバラにしやがったお前には損害賠償を請求しようか?」

「貴様の未熟を反省せずに俺に八つ当たりは困るなぁ」


 見た目の歳が近いからか、こんな感じでアーサーとパーカー男は打ち解けている。

 パーカー男の名前は"グレイシャード"、近隣の奴隷商人から奴隷達を買い占めて、彼らの身柄を難民として担当機関に引き渡したり、その国の情報収集などをしているそうだ。


「尤も、帰還希望者にプロパガンダ目的で色々と吹き込んでから故郷に送り返す方が重要だな」

「何でそんなにペラペラと話す? 俺達が狩人って言ったのは嘘だが田舎者には違い無いぞ」

「嘘も素性も今はどうでもいい、ただ俺達が国の為にしている仕事の過程でお前らに殺されでもすると、命の恩人であるユウ殿に多大な迷惑がかかるのだ」

「『のだ』だとお? こっちだってユウの事を考えて半殺しにしてやっただろうが」

「………それが判るから情報開示してるんだ。スゥー……ユウ殿」

「その"殿"辞めてくれませんか?」

「ではユウさん、我々が拠点にしている村に行きましょう。ここより安全でずっと快適です」

「良いのですか?」

「良いのです。ユウさんは医者を志しているのでしょう? 佇まいからしてさぞや高貴な生まれかでしょうに、腕の立つ傭兵4人を護衛にこんな森の中で野営をするとは……訳有りでしょう?」


 貴族ではないが事実として、ユウこと"U(ユー)・Boom(ブーム)"はCBBの世界で戦闘はおろか、ゲーム内通貨を使った買い物すらした事がないお坊ちゃんである。

 それに比べて他の4人はCBBの各種ランキングでも上位に居て、特にアーサーは個人総合ランキングトップ5以内を長年キープしている。


「奴隷の中には奴隷商から奴隷商へと幾つもの人手に渡った者も居る。素性を明かしたく無いのであれば、そういう追跡困難な難民としてこの国での新しい身分証を発行致します」

「ほほぅ、では見返りは一体何だ?」

「あぁん? 俺はまだ貴様らを完全には信用していない、しかしユウさんの、見習いとは言え真摯な行動は信用に値する。手際も含めてね。なので医者としてその腕前を振るって頂く事が一番の見返りです、ユウさんは」


 そんなに褒められるとやはり照れるなぁ。

 世辞を感じる言い方には満更でも無いので頬を掻きつつ先を促す。


「いやぁ僕なんてまだまだですよ。でもよかったねアーサー、『完全には』って事は多少信用されてるみたいですよ。あゝ、僕は貴方の事を完全に信頼していますからね。……それで?」

「コイツらの『腕』だけなら信用に値しますからね、それを見込んで一つ依頼をしたい。内容については村で話します」

「だそうですがアーサー、僕は貴方の判断に任せます」

「フーンそーかい、よし、お前ら! 行くぞ」

「うーい」

「やっとか」

「ルンルンいぇあー」


 一行は村へ移動した。

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